世界最大級の政府系ファンド(SWF)のトップが、プライベートエクイティー(PE、未公開株)業界にタイムリミットが迫っていると警告した。同業界のバリュエーション手法に懸念を持つ投資家の声に同調した。

クウェート投資庁(KIA)のマネジングディレクター、シェイク・サウド・サレム・サバーハ氏は、PE業界がここ数年、投資家への資金還元に苦慮していると指摘。

企業の合併・買収(M&A)や新規株式公開(IPO)の停滞が主因だが、一部のPE投資会社は現金化が難しいような価格設定で案件を組成していると述べた。

シェイク・サウド氏

「PE業界は非常に困難な状況にある。特に大規模な買収、ベンチャーキャピタル(VC)に問題があり、継続ビークルの増加は非常に憂慮すべき兆候だ」と同氏はカタールのドーハで開かれたカタール経済フォーラムのパネル討論会で語った。

買い手と売り手の評価額乖離(かいり)が埋まらず、投資先企業を売却やIPOによって現金化することが難しくなっている中で、PE投資会社はいわゆる「継続ビークル」を利用するケースが増加している。

継続ビークルはゼネラルパートナー(GP)と呼ばれる運用会社が優良資産の保有を延長しつつ、リミテッドパートナー(LP)と呼ばれるファンド出資者に取りあえず支払いをする手段になる。LPからの資金回収要求は強まっている。

ただ、継続ビークルは新規ファンドの資金調達が困難になる要因にもなる。

VC業界も同じような圧力に直面している。スタートアップが黒字化・上場するまでに時間がかかり、創業者が非公開のまま事業を維持するケースも増えている。

KIAは世界有数のSWFで、中東で2番目に大きい。上位6本の中東ファンドだけで合計約4兆ドル(約573兆円)の資産を運用しており、これまでPEファンドの主要出資者として業界を支えてきた。

しかし今では、複数の機関投資家や規制当局が、PE業界のバリュエーションの不透明さに懸念を示している。 英金融行動監視機構(FCA)は昨年夏、プライベート市場の評価手法に関する大規模な調査を開始した。

原題:Private Equity Is Troubled, $1 Trillion Kuwait Fund’s Boss Warns(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.