(ブルームバーグ):ソニー生命保険の稲葉亮治執行役員は、国内金利の一段の上昇(債券価格の下落)リスクを踏まえ、減損処理会計の適用を避けるため保有国債売却を含めて対応する方針を明らかにした。
運用企画部担当の稲葉氏は20日のインタビューで、超長期債金利の一段上昇リスクには非常に危機感を持っているとした上で、減損回避策として「必要に応じて売却などの対応を取る」と話した。
20日の20年債入札が記録的な不調に終わり、新発30年債利回りは1999年の入札開始以来の過去最高、新発40年債利回りも過去最高を更新した。このまま金利上昇が続けば、投資家が抱える国債の評価損が膨らみ、売りが売りを呼ぶ悪循環に陥る可能性がある。
生保は保有債券の価格が大きく下落した際に、有価証券の減損処理として時価と簿価の差額を損失処理する必要がある。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤原和也債券ストラテジストは超長期債の現状について、2020年発行の40年13回債が元本の半分以下に下落していることが象徴的だと指摘する。減損処理を迫られる可能性があり、機関投資家は低利回りの保有国債を売っているようだと語る。このため在庫を抱えた証券会社のリスクテイク余力が低下して流動性が低下し、ボラティリティーが上昇していることが20年債の不調につながったとみる。

検討
ソニー生命の稲葉氏は、まだ保有国債の減損処理を迫られる状況には至っていないとしながら、金利が一段と上昇した場合の財務運営への影響も含めて「社内でもいろいろと対応を検討している」と語る。
超長期債相場については、規制対応の買いが一巡し、生保の買いには「あまり期待できない」として、財政拡張の思惑もあり売られやすいと話す。買い手不在の中、流動性低下とボラティリティー上昇によってリスクテイク余力が後退するという「悪循環が起きており、発行減額や日本銀行の国債買い入れオペ増額など需要改善のきっかけがない限り、地合いの転換はなかなか見込めない」と言う。
日銀が19日公表した債券市場サーベイによると、超長期債を中心に流動性が低下してボラティリティーが上昇していることを受けて、3カ月前と比べ機能度は大きく悪化した。稲葉氏は「自社の取引が市場に影響を与えるという懸念は常に持っており、まとまった取引をしづらい環境だ」と語る。
日銀は20、21両日、債券市場参加者会合を開き、6月の金融政策決定会合で行う国債買い入れ減額計画の中間評価に向けて、市場の意見を聴取している。稲葉氏は「日銀の買い入れ減額が進むとさらに需給を悪化させる懸念があり、需給には配慮してほしい」と話す。財務省の超長期債の発行減額についても「タイミングは難しいが、来年度は当然視野に入るだろう」と言う。
ソニー生命の前期(25年3月期)末の資産(一般勘定)は11兆7784億円、うち公社債は8兆6474億円で、前々期末(9兆356億円)から残高を削減した。稲葉氏は今期については「残高を大きく減らすことは想定してない」と述べる。前期末の含み損は公社債が1兆3667億円、外債は8770億円。今期末の金利の想定は10年1.6%、20年2.6%、30年2.9%、40年3.1%。
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.