トランプ米大統領は21日、看板政策である税制改革法案を巡り、共和党の保守強硬派議員らと会談したが、同法案の数兆ドル規模のコストを巡る議員の反対は根強く、解消には至らなかった。

ホワイトハウスのレビット報道官は会談について「生産的で、前進する方向に進んだ」と述べ、会談に同席したジョンソン下院議長も同様の見解を示した。

それでも、ノーマン下院議員を含む複数の議員が現在の法案内容に反対を表明しており、ローズ下院議員も21日遅くに反対派に加わった。

保守派はメディケイド(低所得者向け医療保険)の一層の削減やクリーンエネルギー税額控除の早期廃止を要求している。一方でこうした主張に党内中道派が反発しており、下院指導部は板挟み状態となっている。

それでも党指導部は、早ければ21日中にも採決を実施する構えだ。スカリス下院院内総務は記者団に対し、「今夜採決を行う」と語った。

ホワイトハウスはこの日、税制改革法案を迅速に可決するよう共和党議員に圧力を強め、可決に失敗すれば「最大の裏切り」になると警告した。

行政管理予算局(OMB)は法案を支持する文書で「下院は直ちにこの法案を可決し、『約束したことは守る』という姿勢を国民に示すべきだ。トランプ大統領は自らの約束を守ることに全力を注いでいる」と記した。

協議が続いた中、投資家の間には米国の債務負担が今回の税制法案でさらに悪化することへの警戒感が強まる兆候も見られた。

21日の米国債市場では売りが続き、特に長期債が大きく値下がりした。20年債入札は相対的に低調だった。債券売りで30年債利回りは一時13ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、2023年以降で最高の5.10%付近に達した。

トランプ氏が推進する大型の税制・歳出法案は、争点の一つだった州・地方税(SALT)控除上限の問題が解消された一方、保守強硬派が法案成立を阻止する構えを見せており、先行きは不透明感を増している。

ジョンソン下院議長は21日、SALT控除上限を4万ドル(約575万円)に引き上げることで高税率州選出の議員と合意に達したと明らかにした。ニューヨークやニュージャージー、カリフォルニアなど高税率州選出の議員は、SALT控除上限で十分な引き上げがなければ法案に反対票を投じることも辞さない姿勢を表明していた。現行1万ドルの上限はトランプ政権1期目の税制改革で導入された。

一方で保守強硬派議員は、SALT控除に関する合意が発表された直後に反発姿勢を鮮明にした。

複数の保守強硬派議員は、ホワイトハウスが提示した譲歩を下院共和党指導部が履行していないと非難。ハリス下院議員は、トランプ政権が「深夜の合意」でメディケイド給付の一段の削減に加え、バイデン前政権下で導入されたクリーンエネルギー関連の税控除をより早期に撤廃する方針を約束していたと語った。

ハリス議員は、法案の内容が合意事項を反映しておらず、このまま採決に進めば保守強硬派は阻止に動くと言明。同じく保守強硬派のノーマン議員は「この法案には票が足りていない。全く届いていない」と述べ、成立は困難との見方を示した。

トランプ大統領(右)とジョンソン下院議長

また共和党指導部は保守強硬派の要求に応える形で、メディケイドの新たな就労要件導入時期を当初の2029年から26年12月に前倒しする方針だと、協議内容に詳しい議員が明らかにした。

原題:GOP Tax Bill Impasse Unresolved After Trump Meets With Holdouts、White House Says Failure to Pass Tax Bill Would Be ‘Betrayal’、Trump Tax Bill Threatened by Ultraconservatives After SALT Deal(抜粋)

(大統領報道官や下院院内総務の発言などを追加して更新します)

--取材協力:Skylar Woodhouse.

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