参院は21日の本会議で、日本銀行審議委員に元三菱商事代表取締役常務の増一行氏を充てる国会同意人事案を賛成多数で可決した。近く開かれる衆院本会議でも同意を得られる見通し。内閣の任命を経て7月1日に就任する予定だ。

日立製作所出身の中村豊明審議委員の後任で、任期は5年間。1982年に東大法学部を卒業し、三菱商事に入社。執行役員・主計部長などを経て、2016年に代表取締役・常務執行役員に就任し、最高財務責任者を務めた。現在は日本公認会計士協会理事で、東京芸術大学監事の肩書も持つ。総合商社出身は同社副社長だった亀崎英敏元審議委員(07年から12年)以来となる。

増氏は三菱商事で財務・経理部門を中心に担当。ブルームバーグが入手した政府の国会提出資料によると、企業会計基準委員会委員や国際財務報告基準財団(IFRS)の評議員を務めるなど、国内外の財務情報の開示基準の策定にも大きく貢献したという。政府は4月10日に増氏起用の人事案を衆参両院に提示した。

日銀は植田和男総裁の下で金融政策の正常化を進めている。ただ、トランプ米政権の関税政策に伴う先行き不確実性の高まりを踏まえ、利上げ路線は様子見状態にある。2%の物価安定目標の実現に向けて、米関税を受けた企業行動に注目が集まる中、総合商社出身の増氏の知見に期待がかかる。

審議委員は、日銀の最高意思決定機関である正副総裁を含めて9人で構成する政策委員会のメンバーで、金融政策運営を決める投票権を持つ。中村委員は、昨年3月のマイナス金利解除など大規模緩和からの転換や、その後の2回の利上げに対して反対票を投じてきた。増氏に代わることで政策委員会内の議論の変化も注目される。

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