(ブルームバーグ):日本の4月の輸出は、関税措置が導入された米国向けが自動車を中心に4カ月ぶりに減少した。市場からは今後の貿易への下押し圧力を懸念する声が出ている。
財務省の21日の発表によると、対米輸出は前年同月比1.8%減と4カ月ぶりのマイナスとなった。自動車は4.8%減。建設用・鉱山用機械や半導体等製造装置も減少した。
トランプ米政権は4月までに、輸入自動車や鉄鋼、アルミニウムに25%の追加関税を導入。米国はこれらの分野別関税に加えた一律関税も発動し、7月初旬には現在10%の税率が24%に引き上げられる予定だ。日本の米国への輸出は自動車だけで全体の約3割を占め、一連の関税措置は日本経済にとってさらなる打撃となり得る。
明治安田総合研究所の小玉祐一フェローチーフエコノミストは、米関税の影響が「既に出てきている。今後さらに本格化し、貿易への下押し圧力は強まる」との見方を示した。その上で、実質賃金のマイナスが続く中、外需の落ち込みを内需でカバーすることは難しいとし、「テクニカルリセション(景気後退)になる可能性はある」と語った。
米国向け自動車輸出は金額ベースで4カ月ぶりに減少したが、数量ベースでは4カ月連続の増加だった。財務省担当者は、対前年比で円高となったことに加え、単価の低い自動車が多く輸出されたと言えると説明。その上で、駆け込み輸出や輸出の抑制は見受けられず、関税政策の要因か判然としないとした。
ドル・円の平均値は1ドル=147.70円と前年比2.6%の円高。
関税交渉
対米交渉を担う赤沢亮正経済再生相は20日の記者会見で、「米国による一連の関税措置の撤廃を求める姿勢に変わりない」との姿勢を改めて示し、「早期合意を優先するあまり、日本の国益を損なうことになってはならない」とも述べた。週内に訪米し、3回目の閣僚級会合に臨む。
みずほ証券の河埜友飛マーケットエコノミストは、日米交渉が続く中で「何かしらの譲歩を米国から引き出せるとの思惑が働く可能性」があり、輸出は様子見になるだろうと指摘。自動車に関しては5月はさらに減少する可能性はあり得るとの見方を示した。
4月の全体の輸出は前年比2.0%増と7カ月連続のプラス。伸び率は市場予想の2.5%増を下回った。輸出から輸入(同2.2%減)を差し引いた貿易収支は1158億円の赤字と、3カ月ぶりのマイナスとなった。
1-3月期の日本の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率0.7%減と、4四半期ぶりのマイナス成長に転じた。輸出は前期比0.6%減と4期ぶりの減少。GDPの過半を占める個人消費も力強さを欠く中、米関税の影響でさらなる下押し圧力がかかる恐れがある。

(詳細とエコノミストコメントを追加しました)
--取材協力:野原良明、氏兼敬子.
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