将来の金価格の上昇を予見し、巨額の利益を上げた中国の億万長者、辺錫明氏が、今度は同国最大の銅強気派として注目されている。米中関係の緊張激化で揺れる市場下で構築したポジションはおよそ10億ドル(約1450億円)相当だ。

最初にプラスチックチューブで財を成した辺氏(61)は過去2年間にわたり、中国の金先物への投資で話題を呼んだ。辺氏はドル離れやインフレ懸念を背景に金価格が上昇すると予想。同氏のファンドは金価格が記録的な上昇を開始した時期に投資しており、ブルームバーグの試算によると、約15億ドルの利益を上げている。

貿易戦争と休戦の可能性が市場を揺るがす中、辺氏および同氏が所有する証券会社、中財期貨が上海先物取引所における銅先物取引で最大のネットロング(買い越し)ポジションを有していることが、事情に詳しい関係者や証取のデータで明らかになった。

辺氏自身の投資および中財期貨を通じて運用しているファンドが10カ月にわたる購入を経て積み上げた持ち分を合わせると、銅先物のロングポジションは16日時点で9万トン近くに達している。これは同業他社を圧倒する規模だ。

世界的な電化に不可欠な産業用金属である銅の上昇軌道を予想しているのは辺氏だけではない。エネルギー転換の長期的なダイナミクスと銅鉱山からの限られた供給は長期にわたり強気派によって強調されてきた。

商品トレーダーは過去数カ月、トランプ米大統領の銅に対する関税賦課の脅威を利用して利益を追求してきた。マーキュリア・エナジー・グループの金属部門責任者、コスタス・ビンタス氏は3月、銅価格が過去最高値を更新し、1トン当たり1万2000-1万3000ドルに達する可能性を示唆。これは足元の9500ドル前後を大きく上回る水準だ。

辺氏は2024年の大半の期間にショート(売り持ち)ポジションを保有していたが、昨年11月の米大統領選挙直前にロング(買い持ち)に転換。トランプ氏の勝利に伴う米製造業への投資促進や中国の経済刺激策を見込んだ。

関係者が非公開情報として匿名を条件に明かしたところによると、地政学的な混乱で一部の投資家が撤退した後も、同氏は現在のポジションを維持する意向だという。これは、銅および世界最大の消費国である中国の経済に対する信頼の表れだ。

中糧期貨の上海北外灘部門のバイスプレジデント、リー・イーヤオ氏は「これは非常にユニークな銅のポジションであり、注目に値する。通常市場で見られる中短期的な戦略とは異なり、ファンダメンタルズに基づいた非常に長期的な強気のセンチメントを反映している」と指摘。通商面での混乱が最悪の局面を迎えた際に、他の多くの投資家が撤退する中で堅持した辺氏の逆張りは特に注目に値すると語った。

原題:Trader Who Made $1.5 Billion on Gold Builds a Giant Copper Bet(抜粋)

--取材協力:Jin Wu、Mihir Mishra.

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