(ブルームバーグ):ウォール街のパニックは、やってくるのと同様に消えるのも速かった。
わずか数週間前、世界中のトレーダーがトランプ米大統領が仕掛ける貿易戦争の影響に身構えていた。市場は巨額の価値を失い、米国の金融覇権はかつてないほど揺らいでいた。
そうした投資の風景は、足元で様変わりしている。トランプ氏はほぼ毎日のように関税交渉の進展をアピールし、景気停滞と物価上昇が同時進行するスタグフレーションの懸念を和らげようとしている。リスク資産は急反発を見せ、S&P500種株価指数は先週、週間ベースで今年2番目の大幅高を記録。社債や仮想通貨の相場も再び上昇した。
それでも懐疑派はこの流れに乗らない。ナスダック100指数に連動する世界最大の上場投資信託(ETF)のショート(売り持ち)ポジションは2月の最低水準に比べ3倍近くに膨らんでいる。
ブラックロックのハイイールドETFのショートが6カ月ぶりの高水準に達するなど、社債市場でも弱気ポジションは拡大している。
慎重な姿勢が続く状況には、4月のショックの記憶がまだ新しいことが影響している。
株式や米国債、金、ハイイールド債などあらゆる資産の極端な値動きを追跡するバークレイズのモデルによれば、トランプ氏の政策によるショックにより、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)当時と同じくらい市場は脆弱(ぜいじゃく)な状態にある。
ソコロ・アセット・マネジメントのマーク・フリーマン最高投資責任者(CIO)は相場の反発について「新たな楽観ムードによるものではなく、最悪の事態が回避されるといった安堵(あんど)感によるものだ」と分析。「投資家は依然として明確な見通しを持てず、それが明らかに信頼感に影響を与えている」と話した。

原題:Battered Wall Street Short Brigade Is Refusing to Admit Defeat(抜粋)
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