16日の日本市場では円相場が上昇し、対ドルで一時144円台後半と1週間ぶりの高値を付けた。日本が米国から円安是正を求められるとの観測が根強い中、米経済統計の低調も重なり、円買い・ドル売りの動きが先行した。

債券は中長期債中心に上昇。株式は午前半ばに主要株価指数が一時下げ幅を広げたが、午後に持ち直した。

米国で15日に発表された4月の経済データは、生産者物価指数(PPI)が予想外の低下で5年ぶりの大幅な落ち込みとなり、小売売上高の伸びも大幅に鈍化した。年内2回の利下げ観測が強まり、SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は、景気減速懸念から米国の利下げ再開が予想以上に早くなる可能性があると指摘した。

ブルームバーグのデータによると、市場の金融政策見通しを反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)は2025年末までに100%の確率で2回の利下げが行われる可能性を織り込んでいる。

一方、朝方発表された日本の1-3月期の実質国内総生産(GDP)は4四半期ぶりにマイナス成長へ転じ、前期比年率で0.7%減と市場予想の0.3%減よりも悪かった。

加藤勝信財務相は16日の閣議後会見で、為替について日米間で緊密な協議を続けていく考えを改めて示唆。来週カナダで開かれる主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議の場でも、ベッセント米財務長官との2国間協議の場を設けたい意向だ。

外国為替

円相場は一時9日以来の高値水準となる1ドル=144円台後半に上昇した。円安是正を巡る観測に加え、低調な米経済指標を受けたドル安・円高の流れが継続。あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストによると、午前10時前の仲値に向け、輸出企業などの実需のドル売りが円を押し上げたという。

ただ、午後は145円台前半で伸び悩んだ。東海東京インテリジェンス・ラボの柴田秀樹金利・為替シニアストラテジストは、トランプ米政権の為替政策に対する懸念がくすぶる半面、日本のマイナス成長で日銀の追加利上げのハードルも上がっていると指摘。「円金利が利上げを織り込む形で上昇し、円高という流れも期待しにくい」と述べた。

債券

債券相場は中長期債を中心に上昇。米国市場で弱い経済指標をきっかけに年内2回の利下げ観測が強まり、長期金利が低下したことを受けて買いが優勢だった。

SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは「日米ともに経済指標が悪化したことを受けて債券買いが入った」と分析。下落が続いていた超長期債も、20年債は買われるなど「米長期金利の低下により少し落ち着いてきた」との認識を示した。

ただ、40年債は引き続き売られ、金利の先高観自体は根強いままだ。アクサ・インベストメント・マネージャーズの木村龍太郎シニア債券ストラテジストは、超長期債は供給が需要を上回る状態が続いていると指摘。GDPのマイナス成長については「景気が良くないことが相場の支えになっておらず、財政拡張につながるとの連想からむしろネガティブに働く可能性もある」と話した。

新発国債利回り(午後3時時点)

株式

株式相場はTOPIXが3営業日ぶりに小反発。日米経済統計の低調な内容を受け、相対的に景気変動の影響を受けにくい医薬品や情報・通信、食料品などディフェンシブセクターが堅調。半面、米半導体製造装置メーカーのアプライド・マテリアルズの控え目な業績見通しが響き、半導体関連銘柄は下げた。

東証33業種は繊維製品や海運、医薬品、小売りなど21業種が上昇。サービスや鉱業、電機、銀行など12業種は下落。売買代金上位では東京エレクトロンやレーザーテック、ルネサスエレクトロニクスが売られ、リクルートホールディングスも安い。J.フロントリテイリングやサイバーエージェントは急騰した。

三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは、米国では景気が減速しているが、関税の引き下げが進展すれば利下げできるため、日本株は大崩れはしないとの見方を示していた。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:長谷川敏郎、横山桃花.

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