(ブルームバーグ):日本銀行の中村豊明審議委員は16日、米関税政策の影響に強い警戒感を示し、金融政策は「当面現状維持が適当」との見解を示した。出張先の福岡市で講演した。日銀が講演テキストを公表した。
中村氏は、米関税政策の影響が広く懸念される中で、企業業績や設備投資、賃上げの状況などを丁寧に把握していく必要があると説明した。米関税を受けた企業業績の悪化で、需要や物価が押し下げられる悪循環に陥るかもしれないとも述べ、「賃上げや国内の消費・投資需要の動向を確認しつつ、慎重かつ適切に政策を判断していく」と語った。
日銀は1日の金融政策決定会合で政策維持を全員一致で決めた。トランプ関税を受けた不確実性の拡大を踏まえ、2%の物価安定目標の実現時期を1年程度先送りしたが、利上げを続けていく方針は堅持した。中村氏は昨年3月のマイナス金利解除やその後の2回の利上げに反対票を投じてきたが、米関税政策による企業業績などへの悪影響を懸念し、一段とハト派的な姿勢を強めた。
金融政策運営に当たっては、企業業績の拡大とともに賃金も物価も上昇する「賃上げモメンタムの定着」を重視。高水準の賃上げと日銀が目標とする2%を超える消費者物価の上昇が続く中で、定着を期待するところまで来られたと思うと述べる一方、米国の関税政策の影響次第では、「積極化してきた賃上げモメンタムが低下する可能性があり、今後の動向を注視していく」と語った。
日本経済は、緩やかに回復しているものの、米関税政策によって「ここにきて下押し圧力が強まってきている」と指摘。1日に公表した新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)において「緩やかな増加基調を維持している」とされた個人消費について「私としては、物価上昇や節約志向の影響等により、力強さに欠けていると感じている」との認識を示した。
(詳細を追加して更新しました)
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.