日産自動車は9日、福岡県北九州市に計画していた電気自動車(EV)向けのバッテリー新工場の建設を断念すると発表した。過去最大の損失を見込むなど危機的な経営状況にある中、計画発表からわずか3カ月余りで撤回を余儀なくされた。

日産の発表によると、同社は業績を回復させるため「あらゆる選択肢を検討」しており、リン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池を生産する予定だった北九州市の工場の投資効果について「慎重に検討を重ねた結果」、今回の判断に至ったとした。EVなどの電動車用のバッテリーは今後も市場ニーズや将来の商品ポートフォリオにあわせた戦略の策定に取り組んでいくという。

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販売不振により苦境に立つ日産はターンアラウンド(事業再生)計画を進めており、4月24日には資産見直しに伴う減損損失計上などにより前期(2025年3月期)純損失が最大7500億円に上る見通しだと発表。従来見通しの800億円の赤字から大幅に損失幅が拡大した。

内田誠前社長時代の負の遺産の処理に一定のめどをつけた格好だが、トランプ関税や円高などで経営を取り巻く環境は厳しさを増しており、投資計画の見直しなどを通じたコスト削減が急務となっている。

日産は1月22日に福岡県、北九州市とバッテリー工場建設に関する立地協定を締結。投資総額は1533億円で、25年度に建設に着手し28年度に稼働を始める予定としていた。敷地面積は約15万平方メートルで約500人の雇用創出を見込んでいた。

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