(ブルームバーグ):衆院選の争点となった消費税減税は、財政悪化を懸念する金融市場の力で実施に向けた選挙後の議論が思うように進まない可能性がある。米国を巻き込んだ金利の上昇と為替の円安という警鐘が鳴り、優勢が伝えられる与党も現実路線への修正を迫られると投資家らは読み始めた。
高市早苗首相が責任ある積極財政路線を加速させようと突然の解散・総選挙に踏み切り、与野党共に消費税減税を公約に掲げたことで金融市場では財政悪化への懸念が拡大。超長期ゾーンを中心に国内金利は急上昇し、為替市場では円安が進んだ。
特に金利が跳ね上がった先月20日には海外市場にも飛び火し、米国の10年債利回りは一時4.3%と昨年8月以来の高水準に上昇。ベッセント財務長官は、米市場の反応を「日本で国内要因によって起きている動きと切り分けるのは極めて難しい」と述べ、日本市場への懸念をあらわにした。
市場や米国の反応が日本の政策運営に制約をかける可能性が市場関係者の間で意識されている。りそなアセットマネジメントの藤原貴志チーフファンドマネジャーは、高市首相は選挙後に「消費減税実現に向けた姿勢をトーンダウンする」と予測。与野党双方の財政拡張姿勢が円安と金利上昇を招き、米市場にも波及したため、「ベッセント氏が日本に自助努力を求めている」点が重い足かせになるとの見方を示す。
経済・金融市場の情報を提供するマーケットコンシェルジュの上野泰也代表は、高市首相は消費税減税の議論を超党派で設置する国民会議に丸投げするのが既定路線だと指摘。同会議で早期に結論が出て、2026年度内に実施する可能性がある半面、結論が出ずに年度内は断念、自民党内の異論で結局見送りのシナリオもあるとした。
足かせという点では為替市場も同様だ。円が対ドルで159円台前半まで下落した先月23日、日米が協調して円安をけん制するレートチェックを行った可能性が取り沙汰され、円はわずか3日間で一時7円ほど急反発した。衆院選期間中にインフレ圧力を高めかねない円安を抑えるため、米国が高市政権を側面支援したとの観測も広がった。
大和証券の山本賢治チーフエコノミストは、米国によるレートチェックはドル全面安という大きな犠牲を払いながら高市政権を支える結果となっており、日本に「大きな貸し」をつくったと解説。米国は日本に対し、円安や金利上昇を避ける根本的な政策調整を求めており、高市政権の安定はむしろ財政拡大リスクを低減させる可能性があるとみる。
米財務省が先月公表した外国為替報告書でも「円は数十年ぶりの低水準近辺にとどまっている」とし、内外金利差の大きさに加え、「日本の新政権の下で一段と拡張的な財政政策が講じられるとの見通しが主な要因」と言及していた。
与党有利
メディア各社の衆院選の世論調査は、8日の投開票が近づくにつれ与党優位の傾向が強まってることを示している。2日の朝日新聞は、自民党が単独過半数を大きく上回る勢いで、日本維新の会とあわせた与党で300議席超をうかがうと報道。3日の共同通信も自民が単独過半数の勢いで、立憲民主と公明の新党である中道改革連合の不振が続いていると伝えた。
第一生命保険の市村直人運用企画部長は、与党が過半数以上の議席獲得というメインシナリオが実現すれば、金利上昇は一服すると予想。一方、与党が大幅に議席を減らすと、政策実行への期待感の後退とさらなる財政悪化懸念で株安・円安・債券安(金利上昇)のトリプル安のリスクがあると言う。
高市首相は先月31日の街頭演説で、足元の円安は輸出企業に大きなメリットがあると述べるとともに、「外為特会というのがあるが、これの運用が今ホクホク状態だ」と発言した。その後自身のX(旧ツイッター)への投稿では、一部報道機関に誤解があるとし、円安メリットを強調したわけではないと釈明した。
SMBC日興証券の野地慎チーフ為替・外債ストラテジストは、米政権は円安を好ましく思っておらず、「選挙期間中だけ円安抑止に協力してほしいという勝手が通るはずはない」と指摘。選挙後の政権による円安容認は「重大な外交問題に発展し得る」と警戒感を示した。選挙後も政府の円安抑止姿勢は変わらず、財政政策も「現実路線化するのがメインシナリオ」だとしている。
--取材協力:上野英治郎.
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