野村ホールディングス(HD)のホールセール部門長兼インベストメント・マネジメント部門チェアマンを務めるクリストファー・ウィルコックス氏は22日、ブルームバーグのインタビューに応じ、米欧での資産運用事業の買収を決めたことについて「短期的には不確実性に苦しむことになるだろうが、それもまた必要な過程だ」と述べた。

ウィルコックス氏は、トランプ米大統領の関税政策に端を発する金融市場の混乱の中でも投資を続けるよう顧客に助言しているとした上で、「私たち自身がその姿勢を示さなければ、説得力に欠ける」と述べた。

野村HDは同日、豪マッコーリー・グループの米欧の資産運用事業を約2600億円で買収すると発表。同社にとっては過去最大の買収額となる。金融市場の混乱の中においても大型買収を実行したことは、野村HDが米国でのプレゼンスを拡大するという強い意志を示したと言える。

マッコーリー・グループから株式や債券など伝統的資産のアクティブ運用を中心に手がける米運用会社の全株式のほか、欧州の同事業に関する全株式を取得する。買収対象の運用資産残高の内訳は株式が5割、債券が4割、マルチアセットが1割。地域別の内訳では9割を米国が占める。

足元では米国の株式や債券、ドルは売り圧力にさらされている。それでもウィルコックス氏は「米国が世界最大の資産運用市場であるという事実に変わりはない」と指摘。安定的な収益を確保し、国内リテールやトレーディング、投資銀行業務への依存を減らすために、規模拡大を目指していると述べた。

同社では少なくとも20件以上の買収を検討していたといい、今後さらなる補完的な買収も視野に入れているという。

野村HDの奥田健太郎社長も同日の記者会見で「足元の米国のマーケットは不安定だが、中長期的な観点で投資を進めていくべきだと判断した」と述べていた。

ウィルコックス氏はまた、企業の合併・買収(M&A)市場について楽観的な見通しを示した。特に日本では、持ち合い解消やコーポレートガバナンス(企業統治)改革といったトレンドによって取引が進んでいると指摘。

「実際、M&Aの減速は今のところ見られていない」と語り、「もしボラティリティーと不確実性が続けば取引環境にマイナスの影響が出る可能性はあるが、現時点ではそうなってはいない」と語った。

(7段落目に奥田社長の発言を追加して記事を更新します)

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