(ブルームバーグ):シティグループやJPモルガン・チェースなどウォール街の銀行は、カナダの自動車部品メーカー、ABCテクノロジーズ・ホールディングスによるTIフルイド・システムズ買収のための22億ドル(約3100億円)の貸し付け債権がバランスシート上にとどまる「ハングデット」の状態になった。
買い手企業は買収が決まるとすぐに、銀行から資金コミットメントを得る。銀行は通常、買収が完了する前に債権をレバレッジドローンや高利回り債として販売する。しかし事情に詳しい関係者によると、ABCによるTIフルイド買収は、銀行が債券やローンを販売する前に15日に完了した。
オルタナティブ資産運用会社アポロ・グローバル・マネジメントが出資するABCの案件は、トランプ政権が世界的な貿易戦争を引き起こして以降で、巨額資金調達パッケージで銀行が自社バランスシートを使用する最初のケースになった。
シティ、JPモルガン、アポロ、TIフルイドの担当者はコメントを控えた。
銀行はバランスシート上に多くの「ハングデット」債権を抱えると、自己資本要件により他のリスクの高い取引の引き受け能力が制限される場合がある。数年前にレバレッジドファイナンスが失速した際、ウォール街の銀行は約400億ドルの債券とローン債権を抱えた。
レバレッジドファイナンスの今年の案件数は最盛期の2022年と比べるとはるかに少ないが、トランプ氏が2日に相互関税を発表する前に少数の案件が開始されていた。しかし関税に起因するくボラティリティーの高まりで、信用格付けが芳しくない発行体の債券およびローン債権の販売は事実上停止している。
例えば、銀行は3月にペーシェント・スクエア・キャピタルよる動物用医薬品会社パターソン買収の資金として13億5000万ドルのローンを組成したが、案件はまだ価格設定されておらず、買収は今月末までに完了する予定。HIGキャピタルによるカナダのコンバージ・テクノロジー・ソリューションズ買収のための11億ドルのローン販売も長引いている。
ABCの案件について銀行は、9億ドルのレバレッジドローンと並行して、13億ドルの高利回り債を発行しようとしていた。
銀行はプライベートクレジット会社に債権を売却したり、リスク回避指向の投資家を引きつけるために取引の条件を修正したり、あるいはボラティリティーが落ち着いて投資家が債券やローンの購入に前向きになるのを待ったりすることができる。
原題:Wall Street Banks Stuck With $2.2 Billion Debt for Apollo Deal(抜粋)
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