(ブルームバーグ):トランプ米大統領がイランとの戦争で2週間の停戦を宣言したことは、世界市場を落ち着かせた。ただ、その発表後の矛盾する発言や行動は根本的な隔たりが残っていることを示し、停戦をさらに脆弱(ぜいじゃく)なものにしている。
トランプ氏は8日、ホルムズ海峡やイランの核物質、関税、制裁のほか、長期的な和平合意の交渉条件を巡り、SNSに相次いで投稿した。複数の投稿には疑わしい、あるいは不完全な主張が含まれていた。
最も重要なのは、トランプ氏が7日、停戦はホルムズ海峡の再開が条件と主張した点だ。だが、世界の原油供給の5分の1が通航するこの海峡は8日、事実上閉鎖されたままだった。
一方、戦闘も続いており、クウェート軍はイランの攻撃用ドローンによる「激しい」攻撃で、エネルギーや電力、海水淡水化施設に大きな被害が出たと明らかにした。
停戦合意を発表したトランプ氏の最初の投稿ではイランへの攻撃停止のみ明記され、レバノンでの戦闘が対象に含まれるかは不明だった。レバノンではイスラエル軍がレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラと戦闘を続けている。イスラエルのネタニヤフ首相は8日、停戦はレバノンに適用されないと主張したと述べたが、この認識はイランと仲介国パキスタンと食い違っている。
イランのタスニム通信によると、イスラエルによるレバノン攻撃を受け、イランは攻撃が続けば合意から離脱すると警告した。レバノンは対象外とトランプ氏が明確にしたのは8日午前だった。同氏は米公共放送(PBS)との電話インタビューで、「対処される。問題ない」と述べ、合意を破綻させかねないとの懸念を一蹴した。
こうした食い違いが相次いだのは、パキスタンの仲介で7日夜に合意が成立した翌朝だった。合意は、トランプ氏がイランの文明を滅ぼすと脅した直後に成立したものだ。ソーシャルメディア投稿による交渉という同氏の外交手法の危うさが、週末にイスラマバードで予定される協議を前に浮き彫りになった。
クリントン元大統領の中東担当特使で、現在はワシントン近東政策研究所のフェローを務めるデニス・ロス氏は、「今後2週間は混乱含みになりそうだ」とした上で、「双方がどのような約束を交わしたのかを問い直すことも重要だ」と述べた。
それでも今回の動きは市場にひとまずの安心感を与えた。米株は上昇し、原油価格は8日の取引で1バレル=95ドルを割り込んだ。

今回の停戦は、イスラエルとパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスの戦闘終結に向けてトランプ政権が過去に進めた取り組みと似通う面がある。
その合意も武力衝突終結への期待の中で世界の注目を集めた。ただ停戦合意発効後もイスラエル軍は空爆を継続した。現在のイラン停戦と同様、核心部分の詳細や長年にわたり敵対してきた双方の対立は将来に先送りされた。多くの住民がなおテント生活を強いられている戦禍のガザではこの手法が進展を阻んだ。
武力衝突の継続が脆弱な和平合意の終焉(しゅうえん)を意味するわけではない。停戦発表の前後には、双方が土壇場で優位を得ようと追加攻撃を行うことがある。また、2024年のイスラエルとレバノンの合意のように、ほぼ毎日違反がありながらも大枠では維持される停戦もある。
ただ、停戦を受けたトランプ氏の発言は、双方の合意内容や交渉中の課題について、さらなる混乱を招いている。
原題:Trump’s Conflicting Statements Sow Confusion on Iran Ceasefire(抜粋)
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