大手米銀幹部からのここ1週間のコメントは、経済の先行きへの懸念を浮き彫りにしたが、1-3月(第1四半期)の業績自体には不安材料はほとんど見られなかった。

米銀大手6行は同四半期に、約220億ドル(約3兆1000億円)の自社株買い戻しを実施。前年同期に比べ60%以上増額した。貸倒引当金は12億ドル積み増したが、過去3年の平均以下だった。

昨年11月のトランプ氏の大統領当選で解き放たれた「アニマルスピリット」が、同氏の政策発表に伴う不安定要素と衝突した四半期だった。

各行の決算発表は全米の消費者および企業が依然として健全である兆候を示した一方で、先行きを予測するのは難しいという警告が所々に見られた。

ベテラン銀行アナリストのマイク・メイヨー氏は15日、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のブライアン・モイニハン最高経営責任者(CEO)に「7兆ドルの株式市場の損失とあなたのコメントの整合性が取れない。あなたは全く気にしていないように聞こえる」と問いただした。

モイニハン氏は「当社のエコノミストも御社のエコノミストも、成長鈍化を予測しているが、まだそうなってはいない。2025年第1四半期の当行および当行チームの好業績を見失ってほしくない」と返した。

シティグループのマーク・メイソン最高財務責任者(CFO)もアナリストとの電話会議で「当行の信用エクスポージャーと消費者を見ると、消費者は依然として回復力があり、判断力も備えている」とし、消費は継続しており「当行のブランドカードポートフォリオでは実際に消費が増加している」と述べた。

モイニハン氏によると、好調な傾向は4-6月(第2四半期)に入っても途切れていない。消費支出は「落ち込んでいない」と同氏は述べた。

自社株買いに加え、銀行は100億ドル以上の配当金を支払い、株主への利益還元率は80%超とここ4年で最も高水準となっている。

利益も大幅に増えた。6行を合わせた第1四半期利益は400億ドルを突破し、これまでに2回しかない快挙を成し遂げた。

一方、将来の「下方シナリオ」への備えも固めている。そのため9億7300万ドルの引当金を積み増したとJPモルガンのジェレミー・バーナムCFOは説明した。

シティのジェーン・フレーザーCEOは決算を発表した15日、「マクロ環境に関して予測不可能なものを予測しようとは思わない」と述べた。「世界は様子見の態勢にあり、年初に誰もが予想していたよりもネガティブなマクロ見通しに直面している」と付け加えた。

原題:For Wall Street, Worsening Economy Is a Problem for Later (2)(抜粋)

--取材協力:Yizhu Wang、Weihua Li、Keith Gerstein.

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