中国経済は1-3月(第1四半期)に予想を上回る伸びを示した。だが、トランプ米政権との貿易対立の激化で関税ショックを吸収する必要があり、刺激策を求める声は高まっている。

16日発表された1-3月の国内総生産(GDP)は前年同期比5.4%増加。ブルームバーグ調査のエコノミスト予想中央値は5.2%増だった。

 

3月の工業生産は前年同月比7.7%増と、2021年6月以来の高い伸び。エコノミスト予想では5.9%増と見込まれていた。また、3月の小売売上高は前年同月比5.9%増加。伸び率としては23年12月以来の大きさだった。市場では4.3%増と予想されていた。

1-3月の固定資産投資は前年同期比4.2%増加。エコノミスト予想は4.1%増だった。

ソシエテ・ジェネラルの大中華圏担当エコノミスト、ミシェル・ラム氏は今回の指標改善について、「すでに過去の話だ」と指摘。「刺激策の実施がなお急務だ。頻度の高いデータで関税による米国向け輸出への影響が示され、事態がかなり急速に悪化する可能性がある」と話す。

 

国家統計局が16日発表した指標によると、25年の中国経済は堅調なスタートを切り、3月分のデータも好調だった。4月に米中貿易対立が激しくなり、記録的な高関税をトランプ政権が課す前に、それを回避しようとする出荷の前倒しに支えられた面もある。

今回の指標はトランプ政権が4月に対中追加関税を大幅に引き上げる前の時期を対象としており、投資家や企業にとってはほとんど安心材料にならない。大半の中国製品に対する関税は少なくとも145%まで上昇しており、中国経済の重要なけん引役だった輸出は今年縮小に転じる公算が大きい。

1-3月の堅調なデータを公表した国家統計局は警戒感を隠さず、中国経済への支援を強化する必要性を強調した。

「外部環境はより複雑で厳しさを増しており、国内の有効需要を促す動力が不十分で、持続的な経済回復と成長の基礎はまだ固まっていないことを認識する必要がある」と声明で指摘。「より積極的かつ効果的なマクロ政策を実施しなければならない」とした。

 

中国政府はこれまでモノへの支出を増やすことに政策の軸足を置いていたが、サービス業を成長の潜在的な源泉と見なすようになっている。16日発表された作業計画では、商務省などがケータリングや医療、娯楽、観光、スポーツにおける家計支出の拡大に向けた48項目の施策を挙げた。

オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)の大中華圏担当チーフエコノミスト、楊宇霆氏は「中国は国内消費に頼るほかない」と指摘。「今回の小売売上高は明るい材料だ。これが持続可能かどうかは刺激策がどれほどのスピード感や規模で講じられるかにかかっている」と語った。

4月下旬に開かれる共産党中央政治局会議が刺激策のタイミングや規模を巡る当局の考えを探る手がかりとなりそうだ。

今回の前向きなデータを受け、関税引き上げによる景気への具体的な影響が確認された場合にのみ、中国当局が行動を決定する可能性が出てきた点には注意を要する。エコノミストの間では刺激策の実施がずれ込むと見込む向きもある。

ピンポイント・アセット・マネジメントの張智威チーフエコノミストは「政府は輸出減速の程度を見極め、それに応じて対応するのを待つ可能性がある」と述べた。

 

原題:Strong China GDP Growth Fails to Stem Calls for Urgent Stimulus(抜粋)

(市場関係者のコメントなどを追加し更新します)

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