香港拠点のヘッジファンド、リム・アドバイザーズが日本航空(JAL)やANAホールディングス、空港施設に対し株主提案で求めた定款の一部変更を巡り、政策保有の株主同士で共同保有している場合の開示や天下りの禁止を求めていることが分かった。事情に詳しい関係者が明らかにした。

羽田空港に駐機するJAL、ANA両機

関係者によると、空港施設の株主総会における議決権行使で政策保有株主間の事前合意を防ぐため、政策保有株主の間で共同保有がある場合は開示するよう提案した。リムは昨年も空港施設に対し、JALやANAなどからの天下り禁止や政策保有株の売却、保有目的の検証などを定める定款の一部変更を提案していた。

金融庁によると、株主が株主総会での議決権行使について話し合い、議決権の共同行使で合意した場合には実質共同保有者に該当するとしている。共同保有者の場合、大量保有報告書での記載が金融商品取引法で定められている。また、共同保有を開示することは、他の投資家を含む株主にとってより合理的な投資判断にもつながる。

空港施設のケースでは、JALとANAが共同保有者に該当する場合は合計40%程度の保有率となり、経営への影響力は大きい。ブルームバーグのデータによると、JALとANAはそれぞれ約20%の空港施設株を保有する筆頭株主。保有比率が3分の1を超すと、株主総会の特別決議を単独で否決する権限が得られる。定款変更を求める株主提案は、議決権の3分の2以上の賛成が必要になる。

ANAの広報担当者はブルームバーグの取材に対し、株主提案に対する取締役会の意見とともに公表した方が株主の理解が深まると考えているため、提案の中身については現時点では明らかにしていないと述べた。5月下旬に予定する取締役会で審議の上で、取締役会の意見と一緒に公表する方針だという。

JALの広報担当者も、提案の中身については同社取締役会の意見と合わせて公表するとし、詳細についてはコメントを控えるとしている。リムの広報担当者はコメントを控え、空港施設担当者からはコメントを得られていない。

政策保有株を巡っては、企業間で株式を相互に保有し合う「持ち合い」の解消が進められている。持ち合いにより資本効率が悪くなるほか、安定株主の存在によってコーポレートガバナンス(企業統治)の形骸化が懸念されるためだ。

企業向け共同保険料の事前調整が問題視された損害保険会社は政策保有株の全売却を掲げ、売却を進めている。こうした背景から、政策保有株の売り出しは相次いでおり、ブルームバーグのデータによると、2024年の国内株式資本市場は株式の売り出しなどの金額が5兆円と6年ぶりの活況となった。

--取材協力:稲島剛史.

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