JPモルガン・アセット・マネジメントの運用者が、過去3年間蓄積してきた現金の一部を債券に投じ始めている。クレジット市場に亀裂が生じる兆しが見られるためだ。

同社の債券ポートフォリオマネジャー、ビル・アイゲン氏は100億ドル(約1兆4300億円)規模の「JPモルガン・ストラテジック・インカム・オポチュニティーズ・ファンド」を運用する。

同氏は過去数週間、ハイイールド債(低格付け債)や転換社債のほか、社債関連の上場投資信託(ETF)、クローズドエンド型ファンドを購入。具体的な購入対象や金額は明かしていないが、ここ数年なかった投資機会がみられると指摘した。

同氏によると、ハイイールド債の場合、先週の時点で利回りが9%以上に達しており、米国債に対するスプレッド(上乗せ)は5ポイント程度に上った。ブルームバーグの指数では、こうした利回り水準は、過去1年間の平均を1ポイント超上回る。

「興味が出てくるのはまさにこういう時であり、市場のこれら分野に内在するリスクに見合う報酬がようやく得られる時だ」と語る。

トランプ米大統領の広範に及ぶ関税や予測不能な政策が世界の市場を揺るがしている。株式市場は時価総額数兆ドルを喪失。債券は1980年代以降で最大規模の売りを浴びた。

数週間前まで歴史的な低水準で取引されていたハイイールド債の対米国債スプレッドは先週、2年ぶりの水準まで急拡大している。

JPモルガンのウェブサイトよると、アイゲン氏のファンドは、ほとんど制約なく債券市場全体に投資できる仕組みで、2月末時点でポートフォリオの47%が現金だった。投資適格社債の割合は約39%、ハイイールド債はわずか0.4%。

ブルームバーグのデータによれば、今月11日までの過去3年間、同ファンドのリターンは平均年率4.1%と、ベンチマークの1.2%を大きく超過し同業他社の約90%を上回る。

原題:JPMorgan’s Cash-Hoarding Man Makes Move Amid Bond-Market Mayhem(抜粋)

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