(ブルームバーグ):トランプ米大統領の予測不能な関税政策の嵐は日本株市場でも猛威を振るっており、影響を受けにくい内需セクターの中でも「IT(情報技術)サービス」が有望な資金避難先として存在感を見せ始めている。
米国政府が貿易相手国に対し一律10%の関税賦課と対米貿易黒字の多い国・地域を対象にした上乗せ関税を表明した2日以降、東京証券取引所33業種の上昇率上位に並ぶのは3.4%高の陸運業をはじめ、食料品、小売業、情報・通信業など。米関税政策の影響を受けやすい自動車や電機など輸出セクターを避け、内需や業績安定感のあるディフェンシブセクターに投資資金が向かっている証左だ。
ITサービス企業が含まれる情報・通信は1.4%高と、6.1%安の東証株価指数(TOPIX)をアウトパフォーム。同期間の日経平均株価採用銘柄を見ても、上昇率上位にITソリューションの野村総合研究所、総合通信大手一角のKDDIが入り、日経平均の4.9%安を上回っている。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の原口右京ストラテジストは、内需企業の中でも特にソフトウエアなど無形資産で事業を展開している企業は「関税の対象となる可能性は低い」とみている。トランプ氏は9日、米国に報復措置を発動していない日本などの国や地域に対する追加関税を90日間停止するとしたが、リスク選好の動きに転じるには「時期尚早」と原口氏は指摘した。
英調査会社ペラム・スミザーズのアナリスト、リンゼイ・ウィップ氏は投資家のリスク回避姿勢が続く中、IT関連企業が特に利益を得られる立場にあると分析。米関税政策が世界経済の減速につながった場合、企業はコスト削減策の一つとして「自動化と効率性を高めるためにIT投資を行う」との見方を示す。
またウィップ氏は、関税をきっかけに世界の貿易が米国から他地域にシフトした場合、サプライチェーン(供給網)の管理やコンサルティングなどITサービスの需要が押し上げられる可能性があると指摘。さらに国内でも、労働人口の高齢化や政府がデジタルトランスフォーメーション(DX)に注力していることが追い風になるとみている。
とはいえ、国内ITサービス企業の中でも海外で多くの売り上げを計上しているケースがあり、トランプ氏の関税政策が米経済に打撃を与えれば、業績にマイナスの影響が及ぶ可能性は否定できない。ブルームバーグのデータによると、NTTデGの前期の北米売上高比率は18%だった。
それでもUBS証券の守屋のぞみストラテジストは、日本株市場ではITサービスや消費、不動産など内需セクターを引き続き選好するという。世界的に不確実性が高い状況の中、日本企業の財務基盤は相対的に強く、変革推進の余力もあるとみているためだ。
コンサルティング企業のベイカレントは10日、今期(2026年2月期)から配当性向の目安を従来の20-30%から40%に引き上げ、5月には30億円の自社株買いを実施すると発表。株価は翌日の取引で12%高と急騰し、日経平均採用銘柄の2日以降の上昇率では15%高とニトリホールディングスに次ぐ2位となっている。
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