(ブルームバーグ):グーグルの元最高経営責任者(CEO)、エリック・シュミット氏は建設ラッシュとなっている人工知能(AI)サーバー向けに電力を確保し、世界的なAI開発競争で米国が勝利する最善の道はカナダの水力発電の活用だとの見解を示した。ただ、トランプ政権の関税政策が報復措置を招く中でカナダの協力が得られる場合に限られるとした。
シュミット氏は11日、バンクーバーで開かれたシンクタンク「TED」主催の会議で、米データセンター業界が現在の稼働率を維持するためには90ギガワットの追加電力供給が必要になるとの試算を引用し、「エネルギーには本当に限界がある」と説明。
「ちなみに私の答えは『カナダを考えよう』だ。国民は親切で、水力発電量が豊富だ。しかし今はそういう政治状況ではないのは明らかであり、残念だ」と語った。
同氏は、一般的な原子力発電所の発電容量は1ギガワット前後だが、米国では原発90基の建設はあり得ないとし、「この電力は到底確保できそうにない。これは米国にとって極めて大きな問題だ」と話した。
カナダの政治家は米国のテクノロジー大手が電力を求めていることを承知しており、一部の政治家はそれに応えることを検討している。
カナダ野党・保守党のポワリエーブル党首は1月のインタビューで、「カナダには約250のデータセンターがあり、まだまだ増やすことができる。その秘訣(ひけつ)はエネルギーだ。水力、原子力、天然ガスなど、あらゆる種類のエネルギーが豊富だ。これらの資源による発電を解き放ち、利益をすべて国内に還元しようではないか」と語っていた。
シュミット氏はまた、超大国間のAIを巡る競争が先制攻撃や紛争の引き金になるとの懸念について説明した。
同氏は、「ある国がAIの独占的地位を一方的かつ積極的に目指した場合、競合する国による予防的な妨害工作に遭う」とする先月発表の論文の共著者でもある。
シュミット氏はこの日の会議で、ある国がこうした取り組みを推し進めた場合、データセンターが競合国から爆撃される可能性があると指摘し、このような恐ろしい結果を招かないよう注意を払う必要があると警告した。
原題:Canada Has Answer to Energy Needs in AI Race, Ex-Google CEO Says(抜粋)
--取材協力:Shirin Ghaffary.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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