3月の米生産者物価指数(PPI)は予想外に前月比で低下し、2023年10月以来の大幅な落ち込みとなった。エネルギーコストの低下が影響した。大規模な追加関税が賦課される前は物価状況が落ち着いていたことが改めて示された。

PPIとコアPPIの推移

変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアPPIは前月比0.1%低下。予想は0.3%上昇だった。

10日に発表された3月のCPI統計でもコア指数の前月比が市場予想に反して鈍化するなど、全般的にインフレ圧力の後退を示唆していた。

しかし、トランプ大統領が輸入品に課した広範囲にわたる関税が価格上昇につながるにつれ、年内にインフレが加速するとエコノミストは予測している。

PPIは輸入品の価格上昇が卸売業者と小売業者の利益率の圧縮によって相殺されていることを示しており、企業は先月すでに実施されていた低い税率の関税からのコスト増を吸収していたことを示唆している。

パンテオン・マクロエコノミクスのチーフ米国エコノミスト、サミュエル・トムズ氏はリポートで、「小売業者の利益率はすでに圧迫されている」と指摘。「製造メーカーの販売価格や輸入価格の今後の上昇から消費者がある程度守られる」ことを示していると述べた。

コア財価格は2カ月連続で0.3%上昇。2カ月の数字としては2年ぶりの大幅上昇となった。油田・ガス機器や衛生用紙製品、エックス線検査機器の伸びが目立った。

一方、サービス価格は0.2%低下と、昨年7月以来の大幅低下となった。卸売業および小売業の利益率は引き続き低下した。テレビやスポーツ用品、自動車、アパレルなどの小売業者は利益率が大幅に低下している。

PPIには米金融当局が物価指標として重視する個人消費支出(PCE)価格指数に反映されるカテゴリーがあるため、注目度が高い。航空運賃が4%低下、医療サービス費用の伸びが鈍化するなど、同カテゴリーはおおむね落ち着いた内容となった。PCE統計は30日に発表される。

関税の引き上げは価格上昇につながるリスクがあるが、多くのコモディティー価格が低迷しており、生産者から消費者や顧客への価格転嫁の度合いが和らげられる可能性もある。

製造業の主要原材料であるアルミニウムや銅、ニッケル、亜鉛を含むブルームバーグ金属指数は2020年以来の低水準付近で推移している。さらに、原油価格は1バレル=60ドル前後まで下落しており、4年ぶりの低水準に近づいている。穀物や家畜の価格も下落している。

食品価格は2.1%低下、エネルギーコストは4%下がった。生産過程における比較的早い段階での物価を反映する中間財は前月比横ばいとなった。原材料価格は4.1%低下し、食料品とエネルギー製品の価格低下を反映した。

統計の詳細は表をご覧ください。

原題:US Producer Prices Unexpectedly Fall, Dragged Down by Energy (1)(抜粋)

(コメントや統計の詳細を加え、更新します)

--取材協力:Augusta Saraiva.

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