トランプ米大統領は9日、米国に報復措置を講じていない日本などの国・地域に対して、上乗せ関税を90日間停止することを承認したと明らかにした。一方、中国に対しては関税率を125%に引き上げた。

世界56カ国と欧州連合(EU)に対する高水準の上乗せ関税が発動された約13時間後というタイミングで突如、トランプ氏は方針を転換した。同関税の発動を受けて金融市場がさらに混乱し、リセッション(景気後退)懸念も強まり、トランプ政権に対しては経済界や投資家から政策を見直すよう求める圧力が強まっていた。

トランプ氏はホワイトハウスで方針変更の理由を巡る記者団の質問に対し、「国民が少し行き過ぎていると思った」とし、「彼らは少し興奮し、また少し恐れていた」と語った。

米税関・国境警備局(CBP)の発表によれば、新たな関税率は米東部時間10日午前0時1分(日本時間同日午後1時1分)に発効。中国に対する125%の関税率は香港とマカオにも適用されるとしている。

トランプ氏の発表を受け、米株式相場は2008年以来の大幅高となり、S&P500種株価指数が9.5%高、ナスダック100指数は12%高で取引を終了。外国為替市場では円がドルに対して下げに転じた。ゴールドマン・サックス・グループのエコノミストは米リセッション予想を撤回した。

トランプ氏はその後に大統領執務室で、「見ての通り、株式市場は記録的な好パフォーマンスとなっている。それが続くよう願う」と話した。

債券相場を「見ていた」

9日の米国債市場では、トレーダーの間で年内の米利下げ見通しが後退したのを受け、2年債利回りが一時30ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇して4%を上回るなどした。

関税の決定に際し債券相場を「見ていた」とするトランプ氏は、「債券市場は非常に厄介だ」と述べた上で、「今見てみると今の債券市場は美しい。しかし、昨夜は人々が少し不安になっている様子が見られた」と話した。

ホワイトハウス高官によると、9日に上乗せ税率発動の対象となった中国を除く国・地域は、それ以外の国・地域と同様に5日発動の10%の基本税率の対象となる。鉄鋼・アルミニウム関税や自動車関税は現行水準に維持する。

カナダとメキシコからの輸入品に対する10%あるいは25%の関税は、「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の対象品目以外、現行のままとする。EUについては、鉄鋼・アルミ関税への報復措置を表明したもののまだ実施されていないことから、10%の税率を適用するという。

トランプ氏は米東部時間9日午後1時18分(日本時間10日午前2時18分)ごろの自身のSNSへの投稿で今回の決定を発表した。「75カ国余り」が貿易問題を巡り米国との交渉を申し入れ、「私の強力な呼び掛けにより、いかなる形でも報復していない」と指摘。「90日間の一時停止を承認し、この期間中の『相互関税』を大幅に引き下げて10%とする。即時発効する」と表明した。

一方でトランプ氏は、中国が交渉を拒否しているとして関税を引き上げると説明。「世界の市場に対する中国の敬意の欠如を踏まえ、米国は中国に課す関税率を125%に引き上げる。即時発効だ」とSNSでコメントした。

投資家らの関心は今後、中国にシフトし、同国が再び対米関税率を引き上げるか、それとも交渉にオープンな姿勢を示唆するかに向かいそうだ。トランプ氏は中国に交渉に応じるよう強いるため、対中関税率をさらに引き上げる必要性に関し、「それは想像できない。もっとやらなければならない状況は考えられない」との考えを示した。

トランプ氏が先に発表した上乗せ関税は米東部時間9日午前0時1分(日本時間同日午後1時1分)に予定通り全面的に発動した。これに対し、中国も報復措置を発表。中国政府は米国から輸入する製品に対する関税率を84%に引き上げるとした。

トランプ氏は中国側の強硬姿勢にもかかわらず、習近平国家主席ら同国指導部が「どこかの時点」で交渉のため接触を図るだろうと予想。「それは彼らにとってもわれわれにとっても素晴らしいとだ。世界にとっても人類にとっても素晴らしいことだろう」と話した。

米国内での工場新設や雇用創出などを公約するトランプ氏は、国内製造業を復活させて米経済を成長させる強力な手段として、広範な関税措置を打ち出した。しかし、戦略の急転換は、それが同氏の目標であり続けるのかや、それをどのように達成する計画なのか疑問を生じさせるものだ。

勝利と位置付け

ベッセント米財務長官は今回の方針転換をトランプ氏の勝利と位置付け、他国との協議において「大統領は最大限の交渉力を生み出した」と記者団に発言。「この瞬間まで方針を貫くには大きな勇気が必要だった。これは最初からトランプ氏の戦略だった」と語った。

また、今後数日以内に日本やベトナム、インド、韓国の当局者と会談する予定であることも明らかにした上で、「日本は列の先頭にいる」とベッセント氏はコメント。「彼らは交渉団を派遣する予定なので様子を見よう」と述べるとともに、各国との貿易不均衡は「何十年もかけてつくられたものだ」とし、「複雑な交渉」になるとの見解を示した。ブルームバーグ・ガバメントが伝えた。

トランプ氏自身は、ベッセント氏やラトニック商務長官と「過去数日間」に議論して上乗せ関税の引き下げを検討していたとし、決定をまとめたのは「恐らく」9日早朝だったと説明した。

このほかトランプ氏は、米企業の一部に対する関税減免措置を「検討」し、「直感」で決めると言明。「一部企業は自分たちに落ち度はないが、たまたま影響を受けやすい業界にいる。多少の柔軟性を示すことができなければならず、私にはそれができる」と説明した。

一方、ベッセント氏はFOXビジネスとの9日のインタビューで、ドルが対円や対ユーロで最近下落していることに関し、経済情勢や日本および欧州における期待によるものだと指摘。このうちユーロ高は、欧州の北大西洋条約機構(NATO)加盟国がトランプ氏の圧力もあってロシアに対抗するための防衛費増額を計画している点が背景にあると説明した。

また円高を巡っては「非常に力強い日本の経済成長とインフレ期待の上昇の結果として、日本銀行が利上げしており、全ては自然なものだ」との認識を示した。

原題:Trump Puts 90-Day Pause on Higher Tariffs, But Hikes China Rates(抜粋)

(為替動向を巡るベッセント財務長官の発言を文末に2段落追加して更新します)

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