「給付はありがたさを感じてもらえない」総理の胸の内は…

ところが、その翌日2日にアメリカ・トランプ大統領による相互関税が発表され、日本に対しても24%の関税が課されることになった。
この発表を受けた7日の参院決算委員会で再び総理の発言はぶれる。

石破総理
「まだ4月7日の時点で、減税云々ということについて言及すべきだと私は思っていない。物価高に苦しむ方々に対して、何が効果的なのかということは、国会における議論も踏まえて、よく私どもとして、タイムリーな対応というものを考えてまいりたい」

結局のところ、総理の真意はどこにあるのか。
与党幹部からは時間がかかる消費税減税よりも給付のほうがハードルも低く、即効性が高いとの意見があがる。年収制限のない一律の給付となると今年度補正予算案の編成は避けられない。

石破総理は周囲に「給付をしてもあまりありがたさを感じてもらえない。給付より、減税を求められている」と話しているという。消費税の減税も選択肢の1つとして廃除していないと見られる。

しかし法改正やシステム改修というハードルもさることながら、減税分の財源をどうするのかという難題が解決していない。国民民主党の玉木代表は5日、自身のインターネット番組で「やるなら赤字国債だ」と断言するが、総理周辺は「総理は財政規律派なので、消費減税するなら他からもってこないことはありえない」と切り捨てた。

トランプ関税「対抗措置を」57% 日本の対応策、最適解は?

目下、対策が急務なのはアメリカのトランプ大統領が表明した相互関税への対応だ。

今回のトランプ氏の関税措置に日本も「対抗措置を取るべき」と回答した人は57%にのぼった。すべての年齢層で「対抗すべき」が「対抗措置を取る必要はない」を上回った。

加藤財務大臣も4日の衆院・財務金融委員会で「一般論」と断った上で、「可能な限り世界貿易機関の紛争解決手続きを経た上で、報復関税措置の発動も可能と考えている」と答弁し、事実上アメリカ側を牽制した。ただ9日には「措置の見直しを強く申し入れていくことが基本的なスタンスだ」と報復関税には慎重な姿勢を見せた。

石破総理も「あらゆる選択肢を考えておかねばならない」としつつ、報復関税については「倍返しみたいなことになりますと、これはもうめちゃくちゃなことになる。売り言葉に買い言葉とかそのようなことをやるつもりはない」(7日・参院決算委)と否定的だ。

7日夜の石破総理とトランプ大統領の電話会談を受け、日米協議の担当閣僚に指名されたベッセント財務長官は「日本に優先交渉権がある」と発言したことで、政府側の期待感もやや膨らんだが日本側の交渉担当の赤沢経済再生担当大臣が今後、アメリカ側とどう協議を進めていくのか。外交手腕が未知数なだけに、打開策が見いだせなければ内閣への打撃となるだろう。

過去最低の支持率 “奇妙な均衡”でじり貧

こうした中、4月のJNN世論調査で石破内閣の支持率は総理就任後過去最低となる30.6%となった。前月調査(3月1日、2日)から7.8ポイント急落した。少数与党として野党と修正協議を経て、新年度予算を成立させたことは一定の評価(56.4%)があったものの、新人議員に商品券を配っていたことや、高額療養費制度をめぐる総理の発言が二転三転したことなどが支持率に影響したと見られている。

「石破総理にいつまで総理でいてほしいか」という質問には、最も多い回答は「参院選まで」で40%だった。「できるだけ長く」と「直ちに辞めて」は17%と同じ水準だ。

商品券問題など総理自身の言動が問題視されても、与党内で“石破おろし”の動きは広がらず、また野党もいま結束すれば内閣不信任案が可決される状況にもかかわらず、不信任案は現状出す気配は見られない。“ポスト石破”を見据える総裁候補たちは、いまはやりたくないと及び腰状態、一方の野党も弱体化した石破総理で参院選を迎えたいというそれぞれの思惑が交錯し、非常に奇妙な均衡のうえに、石破総理が延命されているのが現状だ。