(ブルームバーグ):ウォール街では、複数の大手銀行が多額の貸倒引当金を積み増したものの、主要金融機関の経営者らは信用危機が迫っているとの懸念を一蹴した。
ゴールドマン・サックス・グループのデービッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)はサウジアラビアの首都リヤドで開催された「フューチャー・インベストメント・イニシアチブ(FII)」の会場でブルームバーグテレビジョンのインタビューに応じ、「少数の不良債権事例に関連し、システミック問題が差し迫っていると思わせる兆候は見当たらない」と述べた。
ベテランのディールメーカーで、投資銀行PJTパートナーズのポール・トーブマンCEOも同様の見解を示した上で、信用市場には常に「特異なリスク」が存在すると指摘した。

BNPパリバは7-9月(第3四半期)の貸倒引当金が9億500万ユーロ(約1600億円)に増加したと発表。このうち1億9000万ユーロは「特定のクレジット案件」に対応するためのものだという。
HSBCホールディングスも10億ドルの信用損失引当金を計上。このうち1億ドルは中東地域の単一顧客向けのものだった。
両行の幹部はいずれも顧客名の公表を避けたが、一時的な打撃で、信用市場環境の悪化を示すものではないと強調した。
一連の開示の背景には、自動車部品メーカーのファースト・ブランズや、サブプライム自動車ローン業者のトライカラー・ホールディングスが相次いで破綻し、ここ数週間に信用市場を揺るがせていることがある。
JPモルガン・チェースはトライカラー関連で1億7000万ドルの貸倒損失を計上。ジェイミー・ダイモンCEOは今月、「ゴキブリを1匹見つけたら、他にもいる」と述べ、警戒感を示した。
こうした見解を受け、業界内では銀行とプライベートクレジット会社のどちらがリセッション(景気後退)局面により耐えられるのかを巡り議論が高まっている。
HSBCのパム・カウア最高財務責任者(CFO)は、同行のプライベートクレジットへの直接的なエクスポージャーが100億ドル未満にとどまると説明。その上で、間接的なリスク波及の可能性を懸念しており、プライベートクレジット事業を大きく展開する小規模銀行やヘッジファンドとの関係見直しを進めていると述べた。
原題:Wall Street Shrugs Off Credit Worries Even as More Cracks Emerge(抜粋)
--取材協力:Leen Al-Rashdan、中道敬、Harry Wilson、Claudia Cohen、Joumanna Bercetche、Francine Lacqua.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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