(ブルームバーグ):欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会のシェフショビッチ委員(通商担当)は4日、トランプ米大統領による関税を巡り、米高官との交渉を始める。EU側は、早期に成果を得られるよう、現実的な対応をする構えだ。
EUの意思決定に詳しい関係者によると、欧州側は米国との関係と、現在の経済秩序を可能な限り維持することを目指すという。
トランプ氏は今週、世界の貿易システムを塗り替える試みの一つとして、EUへ20%の相互関税を課すと発表した。EUは交渉を通じて和解したい考えだが、必要であれば独自の関税、サービス課税、米大手テック企業を対象とした制裁措置などの対抗措置を講じる方針を明らかにしている。
シェフショビッチ氏は、EU特有の関税引き下げ、米欧による共同投資の可能性、特定の規制や基準の緩和などの選択肢について議論するとみられる。ブルームバーグは以前、欧州委員会が譲歩案を含む「タームシート(条件概要書)」作成に早くも取り組んでいると報じた。

ただ、匿名を条件に語った関係者によると、EU側はテック規制や税ルールを巡っては譲歩しないつもりだ。トランプ氏が米国の貿易にとって「不公平」だと主張したからといって、公平で正当なものと認識しているこうした規制を犠牲にする考えはないという。
EUは7日に加盟国通商担当相会合を開き、EUとしてのメッセージを発信すると共に、対抗措置について欧州委員会と調整するという。欧州委員会は、米国による自動車関税と相互関税が、3500億ユーロ(約56兆5200億円)相当の欧州製品に影響すると推計している。
関係者によると、欧州委員会は報復措置として全ての選択肢が検討対象だと主張しているが、加盟国に詳細は提示していない。ただ、加盟国代表らは、米国による関税の規模を考慮すると、サービス部門を報復の対象にする必要があるとみている。フランスのロンバール経済・財務相は4日、仏BFMテレビで、加盟国はデジタルサービスを対象とする選択肢などを検討していると明かした。
EU側は、強力な報復パッケージを持っていることを米国に示し、交渉の立場を強くしたい考えだ。それでも、EU高官や加盟国担当者らは、トランプ政権からの要求がどんなものになるかが今なお不明なため、交渉が非常に難航するとみている。
原題:EU Begins US Tariff Talks While Accepting End of Old World Order(抜粋)
--取材協力:Natalia Drozdiak、William Horobin.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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