(ブルームバーグ):任天堂は待望の新型ゲーム機発表会で、人々を喜ばせるだけでなく戸惑わせるという類いまれな能力を示した。
2日に行われた1時間にわたるプレゼンテーションで、ついに「スイッチ2」がベールを脱いだ。発売日は6月5日で、価格は4万9980円(税込み)。ただ、これは日本語・国内専用モデルだ。
3日に東京で行われたメディア向けデモンストレーションで、私はスイッチ2を実際に手に取って試してみた。これは、任天堂が成功させなければならないデバイスだ。
最近では、事前に発表内容が漏れないテクノロジーイベントはあまりない。任天堂は、勝負を賭けたこの家庭用ゲーム機を2日のビデオプレゼンテーションで明らかにするまで、秘密にしておくことに成功した。
示されたのは、ゲームソフトの充実ぶりだ。スイッチ2発売日に「マリオカート」や「ストリートファイター」など18本を投入するほか、世界的に人気の高い「エルデンリング」や人気キャラクターの「カービィ」や「ドンキーコング」関連ソフトの発売を年内に予定している。フロム・ソフトウェアによる完全新作の発売も来年に控えている。
ハードウエアも期待を裏切らなかった。任天堂は過去のゲーム機で、スペックに関し妥協していたが、スイッチ2にはゲーマーが求めるほとんどの機能が搭載されている。4K出力や携帯モードでの120フレーム/秒(fps)サポート、256ギガバイトのストレージなどだ。
プレミアムな製品だと感じさせてくれる。スクリーンは有機ELではないが、美しい上に目を引くほど大きく、本体全体は初代スイッチより少し大きい程度だ。
ボイス・ビデオチャットはライバル企業が数年前から取り入れているが、オンラインでの悪用を懸念する任天堂は、家族用ゲーム機にはこれまで採用してこなかった。
しかし、今回の発表はこの機能を大きくフィーチャー。新しい接続可能なカメラを使って、友人たちがまるで同じ部屋にいるかのようにオンラインで「マリオカートワールド」を楽しむ様子が映像で紹介された。
実際にプレーしてみたマリオカートワールドはとても楽しかった。そのうたい文句通りの広大なオープンワールドをあまり試すことはできなかったが、クラシックなカート体験を、より生き生きとした環境に置き換えている。
このゲームには多くの期待が寄せられているが、その価格に見合うだけの価値があることを証明する必要がある。パッケージ版は9980円だ(スイッチ2本体とダウンロード版マリオカートのセット販売もあり、実質4000円での購入も可能)。
ギャンブル
私は、全体的な価値提案に納得できないままこのプレゼンテーション会場を後にした。任天堂は、意図的にスイッチ2をより重みのあるプレミアム製品へとシフトさせているように見える。
初代スイッチのややおもちゃっぽい感触と比較すると、見た目も使用感もよりハイエンドで、追加料金を払っても構わないと思えるようなタイプのテクノロジーだ。確かにそれにふさわしい価格設定となっている。
2日のオンラインプレゼンテーションは、価格以外を発表して終了。ファンは、トランプ米大統領が間もなく「相互関税」を発表するというニュースが原因で、任天堂が価格の公表をためらっているのかと首をかしげた(数時間後に明らかになった任天堂の主要製造拠点であるベトナムと中国に課された米国の関税を考慮すると、同社は本当に将来に備えていたのかもしれない)。
価格に関する情報は数分後に一連のプレスリリースで徐々に明らかになった。そして、それは困惑を招くものだった。
米国での価格は449ドル99セント(約6万6000円)。任天堂が一般的な消費者をターゲットにしていることを考えると、予想価格の上限に近い。新しいマリオカートとのバンドル版は499ドル99セントだが、初代スイッチが発売時に300ドルだったことを考えると、テクノロジーの進化を考慮しても、これはギャンブルのような気がする。
二重価格
任天堂は日本市場向けに4万9980円の日本語・国内専用版を投入する。日本国内では多言語版も6万9980円で販売されるが、これは任天堂から直接購入するしかなく、購入には初代スイッチのアカウント使用が必須だという。
任天堂が国内での品薄を招き得る海外への転売を警戒しているのか、円安を意識しているのか、あるいはその両方に対応しようとしているのかは分からない。だが、国内市場に照準を定めているのは興味深い。
事実上、二重価格制の実施だ。しかし、国内販売で大きな利益を上げられるとは思えない。ドル建てで考えると、少なくとも価格に見合った価値があるのかもしれないが、ユーザーは特にゲームソフトに関して購入を正当化できるだろうか。
私のようなファンはマリオカートやドンキーコングを購入するため初日から行列に並ぶだろうが、多くのユーザーは「マリオカート8デラックス」が6578円(パッケージ版/ダウンロード版)であるのに対し、マリオカートワールドは8980円(ダウンロード版)という価格設定に疑問を持つだろう。
結局のところ、私が1月に書いたように、スイッチ2はゲームソフト次第ということになる。今のところ、まずまずのスタートとも言えるかもしれない。
それでも初代スイッチのようなものにはならないだろう。初代スイッチと同時発売された「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」はファンと批評家の両方を魅了した。しかし、任天堂は人々を驚かせることがうまくなってきている。そして、困惑させることにもたけてきている。
(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、日本と韓国、北朝鮮を担当しています。以前は北アジアのブレーキングニュースチームを率い、東京支局の副支局長でした。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:Switch 2 Hands-On, Powerful With a Price to Match: Gearoid Reidy(抜粋)
コラムについてのコラムニストへの問い合わせ先:東京 リーディー・ガロウド greidy1@bloomberg.netコラムについてのエディターへの問い合わせ先:リーディー・ガロウド greidy1@bloomberg.netもっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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