トランプ米大統領は2日に相互関税を発表し、日本には24%の関税率が適用される。市場関係者からは、予想よりも厳しい内容で当面はリスク回避の流れが続くとの見方が出ている。今後の交渉への期待や日本銀行の金融政策への影響を踏まえ、一方的な株安・円高には歯止めがかかるとの予想も聞かれた。

市場関係者の見方は以下の通り。

野村証券の澤田麻希ストラテジスト

  • 想定より高い関税率への懸念と、報復や関税による世界景気や各国企業業績に対する不透明感が株式相場全体の重しになっている
  • 日本株は株価収益率(PER)も過去10年のレンジから見ると割安感があり、短期的に自律反発を狙った買いで上昇する場面があるかもしれない

SMBC信託銀行の山口真弘チーフマーケットアナリスト

  • 関税率は想定以上という印象で、経済・物価などへの影響をまだ見極めきれていない状態
  • 交渉が進みどの程度関税率が引き下げられるかさっぱり見えない状況で、悪材料出尽くしにはならないだろう
  • 関税の影響はインフレ上昇と景気悪化と両面あるが、景気が先に意識されるため米金利が低下し、ドル・円は下がっている。円買いというよりはドル売りが強いように思う

みずほ銀行国際為替部の加藤倫義ディレクター

  • 円相場は投資家がリスク回避でエクスポージャー(持ち高)を縮める動きが出ており、市場取引が薄い中で値動きが大きくなっている
  • 新年度入り後で国内の機関投資家は足元の円高を見て、ハウスビューをもっと円高方向に変えようか迷っているところ
  • 国内の輸入企業はドル・円やクロス・円の長いところを買っている。ドルの下落がこの辺で止まればもっと買ってくるだろうが、まだ様子見姿勢だ

野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジスト

  • 欧州連合(EU)が米国の関税措置について、交渉が不調に終われば対抗措置の用意があると表明したことで市場心理が一段と悪化し、ドル安・円高を後押しした可能性がある
  • 株安を通じたリスク回避姿勢の強まりにより、円高が進みやすくなっている
  • 6月末で1ドル=145円を予想しているが、それ以上の円高のリスクも出てきている

GAMAアセット・マネジメントのグローバルマクロ・ポートフォリオマネジャー、ラジーブ・デメロ氏

  • 昨年夏以降、円は安全資産としての特性を取り戻しており、予想を上回る米関税に対する反応から円は引き続き恩恵を受けると予想する
  • 日本国債は数カ月にわたるパフォーマンス不振の後、優れたリスクヘッジの手段であることが証明された
  • 日本株はこれ以上大きく下落することはないと予想。関税率は衝撃的だが、交渉によって引き下げられるとみている

T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジスト

  • 3月末時点で世界経済が相当悪い方向にいくとの見方で日本株はしっかり調整していたため、きょうの株式市場の反応は随分過剰
  • ただ、2024年8月の急落後のようなスピード回復までは難しいだろう。関税は交渉事で、しばらくはボラタイルな場面もあるだろう
  • ダイレクトに関税がショッキングだったことに加えて、円高がそれを後押しする形で日本株は下げた。日本の場合は他のアジアに比べると為替、円高が重しになる

三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチの井野鉄兵チーフアナリスト

  • 当面は日本や世界経済への影響の大きさからリスク回避姿勢が強まり、ドル・円はいったん146円台半ばまでの下落が意識される
  • ただ、時間がたてば24%関税は日銀の利上げの制約材料になることが強く意識されるだろう。冷静に考えれば円を買う理由にはならない
  • 高水準の円ロングの巻き戻しが起これば、ドル・円は3月後半に付けた151円台前半を上抜けていく可能性もある

ATグローバル・マーケッツのチーフ・アナリスト、ニック・トワイデール氏

  • 全体的に見て予想よりも厳しい結果。日本やアジアのほとんどの国にとって打撃となった
  • きょうのアジアではほとんどの通貨とともに株価も下落するだろう。ただし、円は別問題であり、安全資産として評価される可能性もある
  • 投資家は内需関連株やディフェンシブ株に価値を見いだすだろうが、私は株式全体に対して弱気だ

野村証券の伊藤高志シニア・ストラテジスト

  • 日経平均先物が大きく下がり、相互関税をプラス材料と捉える人はいないだろう
  • 事前の関税率の予想にばらつきがあった上、関税政策は複雑で正確な姿は予想できておらず、実際の発表にびっくりする市場参加者も多いだろう
  • 自動車など資本財が売られて日本株は全面安になるだろう

三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジスト

  • 24%はなかなか大きい。きょうはかなりリスクオフが強めの動きになるだろう
  • 日本以上に税率が高い国があり、株式市場は目先グローバルに景気が冷え込むとの見方を織り込むだろう
  • きょうの日経平均は先物の水準まで寄せるように下げていくだろう

SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長

  • 関税率は欧州連合(EU)の20%より高く、自動車など貿易赤字の内容が影響している可能性。米国との交渉が苦しくなるため、リスク回避の円買いが強まりそう

三菱UFJ信託銀行ニューヨーク支店資金証券室のファーストバイスプレジデント、小野寺孝文氏

  • 24%の相互関税賦課を受けて、日経平均を含む株式先物が下がっており、リスク回避で円買いが優勢
  • いったんは1ドル=148円くらいの円高にとどまるとみているが、株安の水準次第で145円台まで円が上昇する可能性もある

(市場関係者のコメントを追加します)

--取材協力:船曳三郎、我妻綾、アリス・フレンチ.

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