(ブルームバーグ):1日の日本市場は株式が伸び悩んで取引を終えた。米国株が底堅く上昇して取引を開始したが、トランプ米大統領の相互関税発表を間近に控えて様子見姿勢が強まった。長期金利は上昇して円は強含んだ。

日経平均株価は434円(1.2%高)まで上昇した後に上げ幅を縮小、午後は下落に転じる場面もあった。米S&P500種株価指数の上昇を受けて買い先行で始まったが、関税発表を米東部時間2日午後3時(日本時間3日午前4時)に控えて買い上がる動きに欠けた。日本銀行の利上げが意識されて長期金利は上昇(債券価格は下落)、金利上昇で円がやや買われた。
名実ともに新年度を迎えた日本市場は、引き続きトランプ氏の関税政策に振り回されている。投資家のリスクオフ姿勢は前日からはやや緩んでいるが、関税政策の具体的な内容と影響が読みにくく、株式を中心に相場に明確な方向感が出にくくなっている。
みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは1日付リポートで、トランプ関税を主因とする景気悪化とインフレ率加速の併存で米経済はスタグフレーション的状況だと指摘。米金融当局は警戒感を強めざるを得ず、追加利下げは凍結が続きそうだと予想した。その上で内外株価は当面さらなる下落リスクが意識され続ける展開となりそうだとしている。
株式
東京株式相場は伸び悩んで取引を終えた。トランプ米政権の相互関税公表を前に米国株が堅調だったことを好感して上昇した後、急速に上げ幅を消した。
景気の影響を受けにくいディフェンシブの代表格である医薬品株が上昇、米関税政策への懸念から前日に売られた自動車株も高かった。一方で上昇していた電機株は下落に転じて銀行株も安い。
任天堂は前日の6.7%下落からこの日は一時4%高になったが、終値は0.9%高だった。任天堂は2日に新型ゲーム機「スイッチ2」を発表する予定だ。
野村証券の澤田麻希ストラテジストは日本株について、貿易摩擦激化への懸念、景気鈍化への警戒がセクターの動きにも出ていると述べた。ガスや不動産など内需セクターが上昇する一方で銀行、精密機器、電機といった景気敏感セクターの売りが目立っているとしている。
その上で引き続きトランプ政権の関税政策に対する警戒が継続しているだろうとして、市場の米国景気減速への懸念が行き過ぎていないかを確認するために今週発表される重要経済指標には注目だと指摘した。
T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジストは、昨日の売りは少し過剰反応だったのではないかという感じもあると述べた。S&P500種株価指数の上昇で、関税の影響は懸念されているほど深刻ではないかもしれないという自信が日本の投資家たちに生まれていると付け加えた。
同時に米関税政策が世界貿易にどのような影響を与えるかという懸念が依然として根強いとして、きょうの株価上昇は限定的なものにとどまるだろうとも述べていた。
債券
債券相場は下落。トランプ米大統領が2日に発表する関税政策に注目が集まる中、日米株価の大幅安が一服してリスク回避の巻き戻しから売りが優勢となった。3月の企業短期経済観測調査(短観)は日銀の利上げ見通しに沿った内容との受け止めも相場の重しになっている。
SBI証券の道家映二チーフ債券ストラテジストは短観について、「物価や人員・設備の判断は日銀の見通し通りでオンラインだ」と述べる一方、足元の株安や米関税の影響は反映されていないとして「国内は順調だが海外の不確実性は大きい」と指摘。2日に発表される米関税政策については、「トランプ政権は財源として考えており、実施は避けられない」として、株価の上値が重くなるにつれて債券は下支えされると述べた。
日銀は4-6月の国債買い入れ予定で、残存期間10年超25年以下などを減額した。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大塚崇広シニア債券ストラテジストは、「事前の予想範囲内の減額で大きな波乱なく消化している」として、超長期金利の上昇も限られたと指摘した。
新発国債利回り(午後3時時点)
為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=149円台後半に上昇。日銀短観が利上げ観測を支持する内容だったことから、円買いがやや優勢だ。トランプ米大統領が2日に発表する相互関税への警戒感も円を支えている。
あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、短観の内容が全体的に予想よりやや良かったことが日銀利上げ期待につながっていると指摘。日経平均株価が上げ幅を縮めて米株先物も軟化しているため、リスクオフ的な円買いもあるとして「ドル・円の上値は重く、関税への警戒感がある」と述べた。
ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストはドル・円について、関税発表で明日、明後日はやや下方向のリスクが大きいとの見方を示した。
また、相互関税は最初は厳しい内容にしてディールを行い、落としどころを見つけることになるだろうとし、リスクオフで株安、円高となり、「その後相手国との交渉が進むとのニュースなどを受けて戻すも根本的な解決に至らず、相場のトレンドが出にくい状況が続きそうだ」と述べた。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
--取材協力:船曳三郎、長谷川敏郎、アリス・フレンチ、横山桃花.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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