・実質賃金を算出する物価指数に「帰属家賃」を含めるべきか議論に
・「持ち家」の負担感としては、住宅ローンの支払いを捉えるのが理想的
・若い世代を中心に住宅ローンの支払いが家計を圧迫
・最近の若い世代は「マンション購入氷河期世代」
・「マンション購入氷河期」は最近の賃上げでも可処分所得に減少リスク
・「含み益」の存在も世代間対立に影響

実質賃金を算出する際の物価指数に「帰属家賃」を含めるべきか議論になった

3月24日に行われた経済財政諮問会議にて、民間議員が国際基準にあわせて実質賃金を計算するように提案したと報じられている。諮問会議の議事要旨はまだ公表されていないため、具体的な議論の内容は不明だが、現在は毎月勤労統計の現金給与総額を消費者物価指数の「持ち家の帰属家賃を除く総合」で割り引くことで算出している実質賃金について、民間議員が(帰属家賃を含む)「総合」で算出するように求めた模様である。

直近の25年1月分のデータは、持ち家の帰属家賃を除く総合で割り引いた実質賃金が前年同月比▲1.8%、総合で割り引いた実質賃金が同+0.3%と大きく異なる。そのため、政府が実質賃金の改善をアピールしていると捉えられそうな話である。

もっとも、すでに公表されている民間議員作成の資料によると、国際比較のために「総合」ベースの実質賃金を示したいというのがポイントだと思われる。赤沢経済再生相は会議後の会見で国際比較の重要性が民間議員から指摘されたことを説明したようである。実質賃金の基準が変更されても、政策決定に何か影響を与えることはないだろう。

図表1:日本と各国の実質賃金 出所:内閣府「経済財政諮問会議」資料より大和証券転載