「ひとり」消費が加速する
このようなハードルは、自分で解決できるものもあれば、周りの理解で解消するものもあるが、マーケットの手助けがあれば、さらに下げることができる。例えば冒頭で紹介したコンサートや推し活を目的とした一人でのピンポイント旅であれば、ライブ会場付近のコインロッカー以外で荷物は預けにくいため市内観光をするためには荷物を持ち運びしなくてはいけないという問題があるが、荷物を一定時間無料で預けることができる観光案内所があれば、市内観光も可能だし、開演までファミレスやカラオケで時間をつぶさなくてもよくなる。
また、高速バス事業を運営するWILLER EXPRESS 株式会社が行った「2024年ゴールデンウィーク期間 高速バス「WILLER EXPRESS」の予約動向」調査によれば、ゴールデンウィーク期間中の利用者数の50.6%が「ライブ・イベント」などの推し活目的で利用すると回答しており、半数を超えている。ホテルの宿泊費用が高騰していることで宿泊費を抑えられるというメリットや、早朝に着くから早くグッズ販売に並べる、そもそも観光が目的ではないから費用を抑えたいという理由からだ。
一方で、女性は夜間に一人でバスに乗るという事に抵抗があるかもしれないが、WILLER EXPRESSのように女性専用車両や女性専用シートの提供、女性客の隣席が女性となるように配置するサービスがある夜行バスも増えており、女性の「ひとり」行動のハードルを下げることに繋がっている。
一人で行動すること自体がネガティブな事として捉えられがちだが、「ひとり」という事が合理的な選択として、より世の中に浸透すること、そして「ひとり」で消費することのハードルが下がることで、「おひとりさま」や「ぼっち」と呼ばれる状態(レッテル)がむしろ普通になっていき、そのような言葉を使う必要がない社会に進化していけばいいと切に願っている。
(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 生活研究部 研究員 廣瀬涼)