全国の物価の先行指標となる東京都区部消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は、3月に上昇率が前月から拡大した。政府の補助金でエネルギー価格の上昇が抑えられた一方、食料の伸びが加速し全体を押し上げた。事前予想を上回る伸びで、市場の追加利上げ観測を後押ししそうだ。

総務省の28日の発表によると、コアCPIは前年比2.4%上昇した。市場予想は2.2%上昇だった。日本銀行が目標とする2%を上回るのは5カ月連続。生鮮食品を除く食料は5.6%上昇と、昨年1月以来の高水準となった。米類は89.6%上昇と、比較可能な1971年以降で最大の伸びだった。一方、エネルギーは6.1%上昇に鈍化した。

エネルギーも除くコアコアCPIは2.2%上昇と前月からプラス幅が拡大し、昨年3月(2.9%上昇)以来、1年ぶりに2%台に乗せた。市場予想は1.9%上昇だった。

日銀は19日の金融政策決定会合で現状維持を決めた。植田和男総裁は記者会見で、春闘の集計結果を含めて賃金・物価は想定通りとしつつ、米関税政策の影響など海外発の不確実性の急速な高まりに警戒感を示した。今回の消費者物価は、世界経済を巡る不確実性が増す中でも日銀の政策正常化路線をサポートする内容と言える。

楽天証券経済研究所の愛宕伸康チーフエコノミストは、食料に加えて家庭耐久財とサービス価格も堅調で「インフレが落ち着いてくるようにはみえない」と指摘。「べき論からすると、日銀は利上げを早めるべきだし、5月1日の追加利上げも可能性はまだある」と語った。一方、トランプ関税が金融資本市場の不安定化につながると、日銀としては利上げはできないだろうとの認識も示した。

 

コアCPIを上回る伸びが続く総合指数は2.9%上昇と伸びが拡大。市場予想では2.7%上昇への鈍化が見込まれていた。植田総裁は26日の国会答弁で、足元の生鮮食品を含む食料品の価格上昇の影響は今後、徐々に減衰していくとしながらも、インフレが経済に広がる場合は「利上げで対応することも考えないといけない」と語った。

賃上げの動向を反映しやすいサービス価格は0.8%上昇となり、前月の0.6%上昇からプラス幅が拡大した。連合の集計によると、今年の春闘の平均賃上げ率は5.40%と、好調だった昨年を上回る34年ぶりの高水準となっており、賃金から物価への転嫁の進展が注目されている。

総務省の説明

  • 米、チョコレート、豚肉など生鮮食品除く食料の上昇がコアの伸び拡大に寄与
  • 冷蔵庫などの家庭用耐久財や、インバウンド需要増を受けた宿泊料なども伸び拡大に貢献
  • 原材料費や人件費上昇の影響を受けた可能性があるすしやハンバーグなど外食が一般サービスの伸びを後押し
    • 他には、契約更新時の価格改定で上昇した民営家賃、宿泊料含む通信・教養娯楽関連サービス
  • 上昇品目数は522品目中359品目で前月の354品目から増加、下落品目数は100品目で前月の103品目から減少

(エコノミストコメントを追加して更新しました)

--取材協力:野原良明.

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