(ブルームバーグ):記録的なペースの米国株安で打撃を受けたトレーダーは一息つけるかもしれない。
JPモルガン・チェースやモルガン・スタンレー、エバコアISIなどの株式ストラテジストは最近の株価低迷について、投資家心理やポジション、有利な季節性などを理由に最悪期は過ぎた可能性があると顧客に助言している。
トランプ大統領が4月2日に発表する関税で、より的を絞ったアプローチを取る計画だと報じられたことで、3月24日の米主要株価指数は上昇。エスカレートするトランプ氏の貿易戦争がインフレ加速と景気停滞を招くとの懸念が幾分後退した。
貿易戦争を巡る警戒感に加え、人工知能(AI)関連のハイテク株上昇は行き過ぎとの懸念がくすぶっていることもあって、株価は2月半ば以降に大幅下落し、S&P500種株価指数は過去最高値から10%下落。そのペースはこの約100年で7番目の速さだった。同指数の時価総額も約5兆6000億ドル(約844兆円)消失した。ブルームバーグのデータが示した。
JPモルガンによると、株安はモメンタム株、つまりS&P500種構成銘柄の株価騰落率における上位50銘柄が中心で、この分野では2年分の上昇が3週間で失われた。ただ、前回の株価上昇局面で積み上がった混雑も和らいだ。
「その結果、短期的に再び急激な巻き戻しが起こるリスクは低いだろう」とドゥブラフコ・ラコスブハス氏ら同行ストラテジストは3月21日の顧客向けリポートで指摘した。

24日の株式市場では、最近、最も痛手が大きかった分野で最大の回復が見られ、ハイテク大手7社「マグニフィセントセブン」の指数は3.4%上昇した。テスラ株は12%高と、昨年11月6日(米大統領選の翌日)以来最大の上げを記録した。S&P500種は1.8%上昇した。
モルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソン氏はラコスブハス氏と同様、比較的楽観的な見方を示した。季節要因やドル安、米国債利回りのほか、極端に悲観的なセンチメントとポジションが「短期的に取引可能な上昇」に道を開くと指摘した。
また、エバコアISIの株式・クオンツ担当チーフストラテジスト、ジュリアン・エマニュエル氏は、経済に関するトランプ政権のレトリックで「ハードルが再調整され、現時点のセンチメントは非常にネガティブになっている形だ」と分析する。
その上で、「これまでの二歩後退については、自然と解決に向かっていると考えられる。今後は相場高に向かって三歩前進する公算が大きい」と指摘した。
相互関税の影響見極め
押し目買いの時機が到来したかは意見が分かれる。貿易政策の不確実性やAIブームでハイテク株が過剰に割高となったとの懸念が市場に影を落としている。ストラテジストは平穏な時期が訪れると予想するが、今のところは米国株への積極投資を表立って勧告することをほぼ控えている。
トランプ大統領による来月の相互関税発表で、経済への影響に関する投資家予想が再び変わるかもしれないことが大きな理由だ。
エバコアのエマニュエル氏は、市場では相互関税が次の材料になるだろうと指摘した。モルガン・スタンレーのウィルソン氏は、「より持続的な上昇相場の道しるべ」として、雇用と製造業のデータのほか、業績予想修正を注視していると説明した。
22Vリサーチの社長兼チーフ・マーケット・ストラテジスト、デニス・デブシェール氏は24日、米国のリセッション(景気後退)入りはないと示唆する形で市場自体は改善傾向にあると指摘した。なお堅調な経済データを踏まえると、投資家心理が異常に低く、関税の影響が軽微なら1カ月、3カ月、6カ月の期間で「通常よりも高いリターン」が得られる可能性があるという。ただ、他の人々と同様に関税の動向がもっとはっきりしてから自身の見解をまとめる方針だ。
「関税が成長の大きな逆風にならないなら、年内を通してファンダメンタルズは回復するだろう」とする一方、「関税で深刻な悪影響が生じない確度は低く、4月2日の発表を待ってから、こうした長期的な見方を前面に出すつもりだ」と語った。
原題:Wall Street Sees Signs That Worst of US Stock Selloff Is Over(抜粋)
(中見出し以降を追加して更新します)
--取材協力:Matt Turner.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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