米国の輸入急拡大で貿易赤字は過去最大を記録し、経済を巡る懸念が高まっているが、これは主に海外の金トレーダーが金塊をニューヨークの保管庫に移そうと躍起になっていることに起因する。

米商務省が6日発表したデータによると、1月の財の輸入は3295億ドル(約48兆6400億円)と、前月から360億ドル増加し、過去最高となった。伸びの60%近くを貴金属の延べ棒を含む金属製品が占めた。

さらに詳しく見てみると、金など貴金属の延べ棒の輸入額は1月に308億ドルと、前月の107億ドルから急増。22、23年の平均月間輸入額は17億ドルだった。

 

米貿易赤字がこれほど劇的に膨らめば、通常は国内総生産(GDP)に大きく影響する。しかし、今回の輸入急増は主に金市場での裁定取引の影響を反映したもので、その大半が生産に回されないことから、政府がGDPを算出する際には除外されることになる。

先週発表された貿易データで財貿易赤字の急激な拡大が示され、アトランタ連銀の予測モデル「GDPナウ」が成長見通しを大きく下方修正したことで、経済への影響を巡る懸念が高まった。このほか同月の個人消費の低迷も響いた。

ゴールドマン・サックス・グループのエコノミスト、マヌエル・アベカシス氏は先週のリポートで、こうした金輸入に関連した貿易統計のゆがみに触れ、「最新のデータに行き過ぎた反応が見られるのはそのためだとわれわれは考えている」と分析した。

ゴールドマンは6日のリポートで、1-3月(第1四半期)の米GDPを年率1.3%のプラス成長と予想。GDPナウは現時点で、年率2.4%のマイナス成長と予測している。

最近の米国の金輸入急増は、主に貴金属が輸入関税の対象となるとの懸念の高まりが要因。安全資産としての買いも加わり、ニューヨーク金先物相場は他の国際指標を大きく上回る伸びを見せ、1オンス=3000ドルに迫っている。

 

原題:Gold Imports at Root of Record US Trade Gap Excluded From GDP(抜粋)

--取材協力:Yvonne Yue Li、Bastian Benrath-Wright.

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