新議会は選挙から30日以内に召集され、新首相の議会での選出投票は正式な連立協議の終了後となる可能性が高い。連邦議会に議席を獲得する政党が増え、二大政党の議席占有率が低下傾向にあるため、ドイツでは近年、連立協議が長期化する傾向にある。今回も協議の長期化が不安視されたが、政策調整がより難航する3党連立が回避され、大連立以外に過半数に届く連立の組み合わせがないため、連立協議は比較的スムーズに進む可能性が高まった。連立協議を主導するCDUのメルツ党首は投開票後、4月下旬のイースター休暇前の政権発足を目指すとしている。選挙前には、別の連立の組み合わせとして、CDU/CSUと緑の党による黒緑連立の可能性も取り沙汰されていたが、両党の合計議席は293にとどまり、過半数に届かない。ボーダーライン上にいたBSWが5%に届いていた場合、二大政党の合計議席が過半数を割り込んでいた可能性があり、その場合、政策調整が難しい3党連立が必要となっていた。連立協議がスムーズに進んだ場合も、政権発足には数ヶ月単位の時間を要する可能性が高い。ドイツでは100ページ超に及ぶ連立綱領を交わすうえ、最近の連立協議では、予備協議入り、連立協議入り、連立合意の受け入れの各段階で議員投票や党員投票を行う傾向にある。次期政権が発足するまでの間、ショルツ首相が暫定政権を率いる。

投票率は82.5%と前回(76.4%)を上回り、東西ドイツ統一後の最高を更新し、有権者の関心の高さが窺える。今回の選挙戦の重大争点は経済環境と移民問題の2つだった。長引く経済低迷による生活困窮と、移民や難民認定の申請者による相次ぐ暴力事件の発生を受け、ドイツでも他の欧州諸国と同様に、欧州連合(EU)に懐疑的で、反移民・反イスラム色の強い極右政党が躍進した。今回の選挙でAfDの得票率は20%を超え、2013年の結党以来で最多の支持を集めた。昨年秋の旧東ドイツ3州の州議会選挙では、ブランデンブルク州で29.2%、ザクセン州氏で30.6%、チューリンゲン州で32.8%と3割前後の支持を集めた。CDU/CSUを含めた主要政党は、極右政党との連立や閣外協力を否定しており、次期政権での極右の影響力は限定的だが、最大野党として連邦議会での重要ポスト、予算配分、発言機会が増えることは確実だ。オランダやオーストリアの最近の選挙では、極右政党が第一党となっており、極右の更なる伸張を阻止するためには、経済立て直しや移民問題への対応において、次期政権が国民の期待に応えられるかが重要となる。