23日に投開票が行われたドイツの連邦議会選挙(定数630)は、2021年の前回選挙で下野した中道右派のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が28.5%の支持を集めて第一党の座を奪還し、極右政党・ドイツのための選択肢(AfD)が前回から倍増の20.8%の支持を集めて第二党に躍進、ショルツ現首相が率いた中道左派の社会民主党(SPD)が16.4%で過去最低を更新、連立に加わる環境政党・緑の党が11.6%と何れも支持を落とし、昨年11月に連立を離脱したリベラル政党・自由民主党(FDP)は4.3%と議席獲得に必要な5%に届かなかった。旧東ドイツの支配政党の流れを汲む左派政党・左翼党(Linke)は、選挙戦最終盤の富裕層増税の方針発表で巻き返し、8.8%と予想外に健闘した。左翼党出身の有力政治家が昨年1月に旗揚げした新興左派政党・ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)は、昨年秋の旧東ドイツ地域の州議会選挙で躍進したが、その後は失速が目立ち、結局、4.97%で議席獲得に必要な5%に僅かに届かなかった。

第一党の座を奪還したCDUのメルツ党首は、選挙後にAfDとの連立発足や閣外協力を改めて否定した。同党は今年1月に移民・難民規制を強化する動議を連邦議会に提出した際、AfDが賛成に回って動議が可決したことを受け、極右勢力と協力しないドイツ政治の長年の「防火壁」を破ったと批判されていた。世論調査で議席獲得に必要な5%のボーダーライン上にいた3党(左翼党、BSW、FDP)のうち、2党が脱落した結果、議席を獲得した政党には得票率を上回る割合の議席が配分された。第一党に返り咲いたCDU/CSUと政権を明け渡すSPDの合計議席は328と過半数(316議席)を上回り、二大政党が大連立を組んで政権を発足する可能性が高い。