(ブルームバーグ):ウクライナは米政府が軍事支援の見返りに鉱物資源収入の分配を求めるディール(取引)の一環として提示した5000億ドル(約75兆円)の基金設立要求に反発している。協議について知るウクライナ当局者が明らかにした。
基金はロシアの侵攻開始以来、戦争で疲弊するウクライナに提供された米国の支援に対する補償となる。ウクライナは実際の額は5分の1程度の900億ドル強だと主張している。交渉は部外秘だとして当局者は匿名を条件に明らかにした。
別の関係者によれば、米国が提示した現行の合意案には疑問の余地のある要素が含まれており、ウクライナのゼレンスキー大統領は承認する用意がないため、交渉をまとめるにはさらに時間が必要だという。
トランプ米大統領は同案を受け入れるようゼレンスキー大統領に圧力をかけているが、両首脳間の緊張は高まっており、ウクライナが最終的な和平交渉から締め出されるとの懸念も強まっている。
ベッセント米財務長官は22日に英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)への寄稿文で、合意案ではウクライナ政府が天然資源やインフラなどの資産から得る収入を、同国の長期的な復興と発展のための基金に配分することを提案しており、同基金は米国が経済的および統治上の権利を持つと説明。民間投資を誘致するために必要な透明性と説明責任、企業統治が確保されるとした。
長官はさらに、米国がウクライナの実物資産の所有権を取得するわけではなく、ウクライナにさらなる債務を負わせることもない点ははっきりさせておきたいと付け加えた。
レアアース鉱物を求める米政府からの最初の提案をゼレンスキー大統領が今月拒否した後、ウクライナ政府当局者は、今週キーウを訪問した米国のケロッグ特使(ウクライナ・ロシア担当)と鉱物資源を巡る取引について協議した。当初案では米国は鉱物や石油、ガス、港湾からの収入の半分を確保することが想定されていたが、何世紀も前の植民地主義をほうふつさせるとの非難を受けていた。
ウクライナ当局者によると、現時点でこうし単刀直入な要求はないが、将来の軍事や財政面の支援について確約がないことが、依然として協議の障害となっている。
ベッセント長官は今週初め、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、鉱物を巡るディールについて、経済的な結びつきを通じてウクライナを米国に近づけ安全保障の盾を提供するというトランプ大統領が打ち出した戦争終結計画の土台になると述べていた。
ワシントン郊外で開催された保守政治行動会議(CPAC)の集会で演説したトランプ氏は「われわれは金を取り戻すつもりだ。レアアースや石油など、入手可能なものは何でも要求する」と発言。「かなり合意に近づいていると思う」と述べた。
原題:Ukraine Opposes Size of Minerals Fund to Pay Back US War Aid (1)(抜粋)
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