高市早苗首相の台湾有事を巡る発言への中国側の反発が続いている。事態打開のめどは立っておらず、長期化すれば日本経済への悪影響を懸念する指摘も出ている。

木原稔官房長官は17日の記者会見で、観光・留学への注意喚起について「人的交流を萎縮させるかのような発表は首脳間で確認した戦略的互恵関係の推進、建設的かつ安定的関係の構築、そういった大きな方向性とも相いれない」と指摘。中国側に適切な対応を求めたことを明らかにした。

中国教育省は16日、日本への留学を計画する学生に対し、現地における中国人の安全リスクが高まっていると注意喚起した。14日には中国外務省が、国民に対して日本への渡航を控えるよう促しており、態度を硬化させている。

中国からの観光客は年間訪日者数の約4分の1を占めており、これが影響を受ければ経済への打撃は大きい。17日の東京株式市場では中国の一連の対応を受け、旅行・観光関連株が売られた。資生堂株は一時11%下落した。

野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストはリポートで、中国政府が日本への渡航自粛を要請する中、向こう1年の中国と香港からの訪日客数の減少に伴うインバウンド消費の減少額は1.79兆円に上り、国内総生産(GDP)を0.29%程度押し下げると試算。「経済的な打撃は相当規模に及ぶ」としている。

経団連の筒井義信会長は17日夕、日中経済交流の前提は政治の安定だと指摘。事態打開に向けては「いろんな層で、いろんな分野で意思疎通、対話を重ねていく、そして双方が解決に向けて進んでいく、これに尽きる」と述べた。官邸で高市首相と面会後、記者団に語った。

「状況注視」と官房長官

外務省の金井正彰アジア大洋州局長が中国側と協議するため、北京に向かったと共同通信が報じた。木原氏は同局長の訪中についても問われ、「日中間では日常的にさまざまなレベルでやり取りを行っている」と述べるにとどめた。その上で、「引き続き状況を注視し、適切な対応を行う」と語った。

中国外務省の毛寧報道官は17日午後の記者会見で、日本は火遊びをやめるべきであり、高市首相は発言を撤回すべきだと改めて表明した。週末に南アフリカで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議に中国から出席する李強首相と高市首相による会談の計画はないとした。

ブルームバーグ・エコノミクスのジェニファー・ウェルチ氏は中国側の対応について「高市政権の初期段階で条件を設定し、他国に同様の発言を思いとどまらせ、日本のさらなる行動を抑え込む狙いがある」と、述べた。「日本は比較的標的にしやすく、観光は制裁の手段として扱いやすい」と指摘している。

日本批判の論評相次ぐ

中国の国営メディアなどからは、日本批判が相次いでいる。中国国営放送と関係があるSNSアカウント「玉淵譚天」はこの週末に「中国は実質的な報復措置に向けて十分な準備を整えた」と警告する論評を掲載した。投稿では、制裁の発動や経済・外交・防衛関係の停止、貿易制限などを報復の手段として示唆している。

中国人民解放軍報も、もし日本の自衛隊が台湾海峡問題に関与すれば「日本全土が戦場となる危険がある」と警告する、研究者による論評を掲載した。

一方、人民日報は17日付の論説で、高市首相の台湾に関する誤った発言によって、日本の右派勢力に根付く「極めて誤りかつ極めて危険な」歴史観と戦略観が露呈したと指摘。国際社会に対し、日本の戦略的な軌道への「高度の警戒」を保つよう求めた。

台湾を巡っては、欧州が今月、2002年以来初めて短時間の立ち寄り以外で現職副総統の訪問を受け入れたことで、中国は強く反発した。この動きは、台湾と欧州連合(EU)との外交的な接触が活発化する中で起きており、台湾を孤立させようとする中国の戦略に逆行するものだ。

尖閣

第11管区海上保安本部(那覇)によると16日、尖閣周辺で中国海警局の船舶4隻が領海内に一時侵入した。領海内への侵入は10月15日以来。中国海警局は、同海域で合法的なパトロール活動を実施したと発表した。

木原氏は領海侵入に関しては「外交ルートで厳重に抗議し、速やかに退去するよう強く求めた」と強調。中国側に対しては「冷静かつ毅然(きぜん)と対応する」とした。

高市首相は7日の国会答弁で、台湾有事に関して、戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、存立危機事態になり得るケースだと考えると答弁した。わずか1週間前の10月31日には中国の習近平国家主席との初の首脳会談を行い、さまざまな分野で意思疎通を強化していくことを確認したばかりだった。

高市早苗首相が言及した「台湾有事」に関する発言に対し、中国外務省が公式に非難声明を発表。一体どのような発言が問題視されたのでしょうか。両者の主張をまとめます。

これに対し、中国の薛剣駐大阪総領事は反発。産経新聞によると、同氏はX(旧ツイッター)に「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬のちゅうちょもなく斬ってやるしかない。覚悟ができているのか」と投稿。この投稿は現在、削除されたとみられる。

同総領事に関しては、日本側から反発の声が出ている。自民党外交部会・外交調査会が11日に非難決議を採択。中国が問題解決に向けた努力をしない場合、同総領事を「ペルソナ・ノン・グラータ」(好ましからざる人物)として通告することを含めた対応を求めた。

茂木敏充外相は14日の会見で同総領事の投稿について「遺憾だ」とし、日中関係の大きな方向性に影響が出ないよう、「適切な対応」を取るよう強く求めたいと語った。

(5段落目のGDP試算値についてエコノミスト側の訂正に基づき訂正します)

--取材協力:関根裕之、Nectar Gan、Jon Herskovitz、Cindy Wang、横山恵利香、Winnie Hsu、稲島剛史、岩城伸也、渡辺漢太.

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