高市早苗首相の台湾有事を巡る発言への中国側の反発が続いている。日本への観光や留学に注意喚起を呼び掛けたことに日本側が交流の停滞を懸念するが、事態打開のめどは立っていない。共産党機関紙も日本批判の論説を発表した。

木原稔官房長官は17日の記者会見で、観光・留学への注意喚起について「人的交流を萎縮させるかのような発表は首脳間で確認した戦略的互恵関係の推進、建設的かつ安定的関係の構築、そういった大きな方向性とも相いれない」と指摘。中国側に適切な対応を求めたことを明らかにした。

外務省の金井正彰アジア大洋州局長が中国側と協議するため、北京に向かったと共同通信が報じた。木原氏は同局長の訪中についても問われ、「日中間では日常的にさまざまなレベルでやり取りを行っている」と述べるにとどめた。その上で、「引き続き状況を注視し、適切な対応を行う」と語った。

中国教育省は16日、日本への留学を計画する学生に対し、現地における中国人の安全リスクが高まっていると注意喚起した。14日には中国外務省が、国民に対して日本への渡航を控えるよう促しており、態度を硬化させている。

人民日報が論説

一方、人民日報は17日付の論説で、高市首相の台湾に関する誤った発言によって、日本の右派勢力に根付く「極めて誤りかつ極めて危険な」歴史観と戦略観が露呈したと指摘。国際社会に対し、日本の戦略的な軌道への「高度の警戒」を保つよう求めた。

また、第11管区海上保安本部(那覇)によると16日、尖閣周辺で中国海警局の船舶4隻が領海内に一時侵入した。領海内への侵入は10月15日以来。中国海警局は、同海域で合法的なパトロール活動を実施したと発表した。

木原氏は領海侵入に関しては「外交ルートで厳重に抗議し、速やかに退去するよう強く求めた」と強調。中国側に対しては「冷静かつ毅然(きぜん)と対応する」とした。

高市首相は7日の国会答弁で、台湾有事に関して、戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、存立危機事態になり得るケースだと考えると答弁した。わずか1週間前の10月31日には中国の習近平国家主席との初の首脳会談を行い、さまざまな分野で意思疎通を強化していくことを確認したばかりだった。

高市早苗首相が言及した「台湾有事」に関する発言に対し、中国外務省が公式に非難声明を発表。一体どのような発言が問題視されたのでしょうか。両者の主張をまとめます。

これに対し、中国の薛剣駐大阪総領事は反発。産経新聞によると、同氏はX(旧ツイッター)に「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬のちゅうちょもなく斬ってやるしかない。覚悟ができているのか」と投稿。この投稿は現在、削除されたとみられる。

同総領事に関しては、日本側から反発の声が出ている。自民党外交部会・外交調査会が11日に非難決議を採択。中国が問題解決に向けた努力をしない場合、同総領事を「ペルソナ・ノン・グラータ」(好ましからざる人物)として通告することを含めた対応を求めた。

茂木敏充外相が14日の会見で同総領事の投稿について「遺憾だ」とし、日中関係の大きな方向性に影響が出ないよう、「適切な対応」を取るよう強く求めたいと語った。

(高市早苗首相の氏名の脱字を訂正します)

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