日本銀行の植田和男総裁は21日、最近の長期金利の上昇について景気回復や物価上昇を反映したものとし、例外的に急上昇する場合には機動的に国債買い入れを増額する考えを改めて表明した。衆院予算委員会で答弁した。

植田総裁は、長期金利上昇の要因を問われ、「基本的には景気の緩やかな回復が持続していることや、基調的な物価上昇率が高まってきていることを反映した動き」との認識を示した。長期金利は市場で形成されることが基本とし、市場の経済・物価に関する見方や海外金利の変化を反映してある程度変動するとも指摘した。

日銀の植田和男総裁

もっとも、市場の通常の動きとやや異なる形で急激に上昇する例外的な状況では「機動的に国債買い入れの増額等を実施する」とした上で、「注意深く市場の状況を見守ることによって判断していく」と語った。一般論としつつ、財政に対する市場の信認が大きく毀損(きそん)した場合に長期金利が上がることはあり得るとも指摘した。

長期金利が上昇を続ける中で、市場は植田総裁の見解に注目していたが、現状の金利形成自体を問題視する発言はなかった。国債買い入れの増額についても、金利急騰の際の例外的な措置と位置付けた形だ。

しかし、植田総裁が国債買い入れ増に言及したことを受け、同日の債券市場で先物が上昇幅を拡大した。3月物は一時前日比82銭高の139円76銭まで上昇。一方で、円相場は対ドルで150円台前半に下落した。

東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジストは「債券市場では売りポジションが相当積み上がっていたので、植田総裁の発言をきっかけに買い戻しが入った」と語る。ただ、植田総裁は現在の長期金利上昇が急激だとは言っておらず、価格形成は市場に任せるとしているため、「相場の反発は一時的で、弱い基調が当面続く」とみている。

日銀の1月利上げ以降も、政策委員による追加利上げに前向きな発言や良好な経済指標が続き、市場では次の利上げ時期を想定より前倒しする動きが出ている。これを受けて、長期金利の上昇が続いており、21日の総裁発言前には一時1.455%と2009年11月以来の高水準を付けていた。

総裁は、重視する基調的な物価上昇率は「まだ2%を少し下回っている」との認識を改めて表明。その上で、基調的な物価上昇率は少しずつ上がってきているとし、今後も上昇が続けば、引き続き金融緩和度合いの調整を続けていきたいと語った。

他の発言

  • 引き続き緩和的な金融環境維持、経済活動をサポート
  • 0.5%への付利引き上げで支払い利息年間1兆円強増える

(植田総裁の発言を追加し、見出しを差し替えて更新しました)

--取材協力:氏兼敬子、船曳三郎、日高正裕、関根裕之.

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