2025年度に賃上げを見込む企業が初めて6割を超えていることが、帝国データバンクの調査で分かった。記録的な賃上げを実現した昨年からモメンタム(勢い)が続いていることを示唆するもので、金融政策の正常化を進める日本銀行にとって好材料だ。

20日に発表された同報告書によると、今年の賃金交渉で正社員の賃金改善を見込む企業は61.9%と、この質問を開始した07年以降で最高となった。このうち約56%が基本給の引き上げ(ベースアップ)を予定していると回答し、最高を更新した。調査は1月20-31日に実施。対象は全国2万6765社で1万1014社から有効な回答を得た。

日銀は1月に政策金利を0.5%程度に引き上げ、先行き利上げで緩和度合いを調整する姿勢を維持した。高田創審議委員も2月19日、賃上げなど前向きな企業行動の持続性が確認されて経済・物価見通しが実現していけば、利上げで「一段のギアシフトを進める局面だ」と発言。市場では追加利上げ観測が高まる中、春闘の本格化に向けて賃金動向が一段と意識されそうだ。

ブルームバーグが1月の金融政策決定会合後に実施したエコノミスト調査では、政策金利を0.75%程度に引き上げる時期は7月が56%で最多となっている。

日本最大の労働組合の全国組織である連合は、今春闘で昨年と同水準の5%以上の賃上げを求めている。ESPフォーキャストの調査では、民間エコノミストの賃上げ予想は平均4.92%となっている。連合は3月6日に賃上げ要求の集計結果を発表。第1回回答集計結果の発表は14日を予定している。

帝国データによると、賃金改善を業界別で見ると製造(67.3%)が最も高く、建設(66.0%)、農林水産(65.3%)、運輸・倉庫(65.0%)が続いた。最低賃金の引き上げや、時間外労働の規制強化に伴う「2024年問題」への対応が求められる業界で賃金改善を実施する企業の割合が増えたという。

調査結果

  • 賃上げを見込む企業の割合、大企業・中小企業・小規模企業すべてで前年から増加
  • 賃金改善の理由、人手不足などによる「労働力の定着・確保」(74.9%)が最多
  • 一時金の賞与で賃上げを行う企業(27.4%)は前年から減少
  • 賃金を改善しない理由、「自社の業績低迷」(58.2%)でトップ
--取材協力:横山恵利香.

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