設備投資の増勢維持ができなければ、潜在成長率は駄駄下がり
設備投資に起こっている人手不足などの供給制約を緩和するためには、IT化やデジタル化などは、これまでと比較にならないペースで進める必要がある。そして、その際、優先順位も相当切り込んで決めなければならない。批判を覚悟で言えば、今いる人で何とかして仕事を回すには、働きたい人がもっと働けるようにすることも考えて良いのかもしれない。これまでの働き方改革は、もっぱら労働時間を削減することに焦点を当ててきたが、やる気があり、やりたい人がもっと頑張れるというあり方も考慮に値する。個人の意思に焦点を当て、ワークライフバランスの自由度を上げるような制度設計を議論し、導入しないと、バタバタと建設が止まる事態も起こり得る。ベンチャービジネスなどでも言われていることではあるが、個人的には必要な制度だと考えている。
2024年の日本経済は、実質・暦年ベースで4年ぶりにマイナス成長になると見込まれる。その中で、明確にプラスとなるのは設備投資だ。2025年はトランプ政策の誕生により、海外経済の不確実性は増している。そうした中で、内需の柱となる設備投資は重要であり、中長期の潜在成長率を引き上げるためにも欠かせない。潜在成長率の当社予想の大前提には、設備投資の増勢が続き、資本投入が増えていくことがある。設備が作れなければ、潜在成長率は駄々下がりしてしまう。
直近2月7日の日米首脳会談では、石破総裁がトランプ大統領に対米投資を1兆ドルやると表明した。米国など海外への投資はどんどん増えるだろうが、国内投資を増やさないと国内に雇用は生まれない。20年以上にわたって放置してきた供給面の課題(労働力不足、エネルギー不足、サプライチェーンの脆弱性など)を急いで解決しないと、国内の景気回復が持続しないという、これまでにない差し迫った状況が生じている。
(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 総合政策研究部 常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任 矢嶋 康次)