米アップルはノートパソコン(PC)「MacBook Air」やタブレット型端末「iPad mini」「iPad Air」などの製品ラインアップを刷新し、より高性能なディスプレーを採用する計画を進めている。

同社は各デバイスに有機EL(OLED)ディスプレーを搭載した新モデルのテストを行っていると、事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。有機ELは現在の液晶(LCD)よりも豊かな色彩と深いコントラストを実現する。

製品発表前だとして関係者が匿名を条件に語ったところでは、3製品の中で最初に有機EL化されるのはiPad miniで、早ければ来年にも新モデルが登場する見通し。

有機EL化に向けたより広範な動きの一環で、ユーザーの買い替えを促す狙いもある。MacとiPadは今年、いずれも販売増が見込まれているが、新型コロナウイルス禍の中で購入が急増した2021、22両年の水準にはまだ届いていない。

アップルの「iPad mini」

より高額な有機ELディスプレーの採用により、価格も上昇する見込みだ。新型iPad mini(コードネーム「J510」)は、現行モデルより最大で100ドル(約1万5000円)高くなる可能性がある。アップルはまた、最近のスマートフォン「iPhone」と同様に防水性能を備えた新しい筐体(きょうたい)デザインもテストしている。

同社は、振動技術を利用した新しいスピーカーシステムも検討中だ。この仕組みにより、水が侵入する可能性のあるスピーカーの穴をなくすことができる。穴を残したままガスケットや接着剤を使用してダメージを防ぐiPhoneの防水設計とは異なるアプローチだ。

iPad miniの前回アップデートは24年終盤で、より高速なプロセッサーと独自の人工知能(AI)システム「Apple Intelligence」が搭載された。

今回の刷新計画はまだ最終決定ではなく、変更や延期される可能性もある。製品開発プロセスではよくあることで、アップルが開発中の18インチ折り畳み式iPadは、発売時期が29年にずれ込む可能性があると、ブルームバーグが先週報じていた。

アップルの広報担当者はコメントを控えた。

初期段階

次世代iPad Airは来春に登場の予定だが、引き続き液晶ディスプレーを採用する。ただ、その次の世代では有機ELへの移行が予定されている。

「iPad Pro」は24年5月に有機EL化を果たした。今月には自社開発の新型半導体「M5」を搭載した最新モデルが発表された。

少なくとも現時点では、iPad Airがアップルのタブレット製品群の有機EL化で最後となりそうだ。エントリーモデルのiPadを有機EL化する計画は今のところない。

アップルの現行モデル「MacBook Air」

「MacBook Pro」は次の刷新で、Mac初の有機ELディスプレー搭載モデルとなる見通しだ。アップルは同じ技術を用いたMacBook Airの開発にも着手しているが、アップグレードは28年以降となる可能性が高い。現行デザインのMacBook Airについては、液晶ディスプレーのままでM5チップが搭載されたモデルが26年春に登場する予定だ。

業界全体でも、有機ELへの移行はまだ初期段階にある。多くのタブレットやノート型PCはいまだに液晶を採用しており、有機ELを使うのはiPad Proやサムスン電子の「Galaxy Tab S11」といった一部の高価格帯モデルに限られている。

アップルが有機ELを初めて採用したのは15年のスマートウオッチ「Apple Watch」で、その後17年に「iPhone X」でスマートフォンにも導入した。

同社は今年に入り、廉価版iPhoneを「iPhone SE」から「iPhone 16e」に一新したことで、非有機ELのiPhone販売を終了。さらに、複合現実(MR)ヘッドセット「Vision Pro」にはマイクロ有機ELと呼ばれるディスプレー技術が採用されている。

原題:Apple Plans to Upgrade Displays in MacBook Air and iPad Lineup(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.