「日本はなぜこうなのか」のヒントは小学校教育に詰まっている

作品中に登場する運動会や音楽会など、本番に向けて何週間も練習を重ねる行事のあり方も特徴的だといいます。「力を合わせる練習をして、達成感を学ぶことが海外にはあまりない。教わるのではなく、自分たちで何かを体感して学んでいくやり方が日本ならではです」

「特に欧米は個人の個性を作り、その次に周りの人とうまくやっていくことを教える。日本は逆で、まず集団の中での責任や役割、貢献が優先されて、次に個人を作っていく」

コロナ禍を経て「自分だけ大丈夫でも生きていけない」ことが諸外国で体感されたことも、協力や思いやりといった日本の教育の強みが評価されている一因かもしれない、と山崎さんは指摘します。

日本の教育も時代とともに変化しているそうです。「協力や思いやりは行き過ぎてしまえば同調圧力や連帯責任になってしまう。ただ私の時代と比べても、例えば1人の子供のために授業を止めて先生が対応したり、ほかの子供たちが待ったりと、個人を尊重する姿をたくさん見ました」

「この20年ぐらい、教育界が力を入れてきた子供たちの自己肯定感を上げようとした結果がこの映画に多く含まれていると思います」

小学校教育を考えることは日本の未来に直結している、と山崎さんは言います。

「他人のことを放っておけない子供たちが日本は多いとされていて、私も自分の息子を日本の公立小に入れたいぐらいプラス面が圧倒的に多い。

そういう教育のプラス面に気づかず、全部を欧米風にしても日本はやっていけない。『日本はなぜこうなのか』のヒントは良くも悪くも小学校教育に詰まっていると思っています」

山崎さんは「日本社会を考える三部作」として前作で取り上げた高校野球、今回の小学校に続き、次回作は日本の大人たちを題材にした作品を構想しているということです。