(ブルームバーグ):ENEOSホールディングス完全子会社のJX金属が3月19日に東京証券取引所プライム市場に新規株式公開(IPO)する。売出規模が最大で4600億円を超える大型案件になる。

関東財務局に14日提出された有価証券届出書によると、想定売出価格は862円。東京証券取引所の資料によると仮条件が3月3日、公開価格は10日に決定する。親会社エネオスが保有株を国内外で売り出すグローバルオファリングになる。需要が強い場合は追加売り出しもあり、最大で4611億円のIPOになる。想定時価総額は約8000億円。新株発行はない。
この売り出し規模は大型上場だった昨秋の東京地下鉄(東京メトロ)の約3500億円を上回り、2018年のソフトバンク(約2兆4000億円)以来の大きさになる。関係する証券会社は株式引き受けランキング(リーグテーブル)への寄与が期待できる。
GCIアセット・マネジメントの池田隆政シニア・ポートフォリオ・マネジャーは「大型案件の影響は無視できない」とし、JX金属が上場した後の株価推移が今後のIPO市場における投資家心理を左右すると指摘。配当利回りが5%ほど確保されていれば、投資家の買いを集めやすく堅調な株価推移になりそうだと述べた。
昨年の国内IPO総額は約9600億円とソフトバンクがあった18年以来、6年ぶりの高水準だった。東京メトロのほかキオクシアホールディングスやリガク・ホールディングスといった大型案件があり活況な一年となった。今年の東証上場第一号となった技術承継機構は5日の上場から株価は堅調で、IPO企業の出だしは好調だ。

JX金属のIPOは急速に発展する人工知能(AI)を背景に注目が高まる半導体への需要を反映する側面もありそうだ。同社は半導体製造において欠かせない材料の供給者でもあり、半導体の製造工程で使用されるスパッタリングターゲットと呼ばれる材料で世界シェアの約60%を有す。
今回の株式上場は、親会社エネオスとJX金属の企業価値を向上させることにつながるという。JX金属は、競争力の高い半導体材料や情報通信材料業界などに注力する方針を打ち出している中、エネオスは株式売り出しを通じて、脱炭素社会に向けた転身を図るために必要な投資や株主還元に取り組む姿勢を示している。
届出書によるとジョイント・グローバル・コーディネーターは大和証券、JPモルガン証券、モルガン・スタンレー、みずほ証券が務める。
(第4段落に識者コメントを追加して更新します)
--取材協力:小田翔子.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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