米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は最新の米消費者物価指数(CPI)について、金融当局はインフレ抑制に向けて大きく進展しているものの、やるべき仕事がまだ残っていることを示していると述べた。

パウエル議長は12日、下院金融委員会の公聴会で証言。冒頭証言後の質疑応答で「インフレに関しては近いところだが、到達はしていない」と発言。「昨年のインフレ率は2.6%だった。よって素晴らしい進展と言えるが、まだ達してはいない」と続けた。

その上で「当面は景気抑制的な政策を維持したい」と述べ、予見可能な将来において高水準の金利が続くことを示唆した。

この日発表された1月の米CPIは市場予想を上回る伸びとなった。食品とエネルギーを除くコアCPIは前月比0.4%上昇と、伸び率は昨年3月以来の大きさとなった。

パウエル議長は、CPIがほぼ全ての予想を上回ったことを認めたが、過剰に反応しないよう慎重な姿勢を示した。

議長は「1つや2つの良好なデータに興奮することはないし、1つや2つの悪いデータに強く反応することもない」と述べた。

この日の米株式市場は下落で取引を開始。日中も軟調に推移したが、下げ幅はやや縮めた。米国債利回りとドルは上昇した。円はCPI発表後に下げを拡大。金利スワップ市場では、今年予想される利下げは25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)一度きりとなった。CPI発表前は2回近くの利下げが予想されていた。

米10年債利回りの推移
ドル・円相場の推移

トランプ大統領の政策

トランプ米大統領は12日、利下げを要求。「金利は引き下げられるべきだ。それは今後の関税と歩調を合わせることになる」と、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。

この投稿について質問を受けたパウエル氏は、トランプ氏の発言には一切コメントしないと回答。その上で、米連邦公開市場委員会(FOMC)が今後も経済情勢に基づいて決定を下すことを、国民は確信できると語った。

パウエル氏はまた、議会や政権が打ち出した政策の賢明さについてコメントするのは金融当局の役割ではないとしつつ、新たな政策の内容次第では政策金利の変更につながることもあり得ると発言した。

「基調的な経済は非常に強いが、新しい政策についてはやや不透明感がある」とパウエル氏は指摘。「われわれに何ができるかを考える前に、そうした政策がどのような影響を及ぼすかを見守る必要がある」と述べた。

銀行監督

パウエル氏はまた、議会が銀行監督担当のFRB副議長を設置する前は、銀行規制の政策は変動がより少なかったと発言。銀行監督担当を置かない方がより効率的に任務を遂行できる可能性があることを示唆した。

パウエル氏は、全てを一人に委ねることが政策の不安定さを生む要因になり得るとの考えを示した。

バイデン前政権時代に指名されたバーFRB副議長(銀行監督担当)は、後任が早期に決まる場合を除いて、2月28日付で同職を降りる意向を表明している。FRB理事としての職務は続ける予定。

政策枠組みの見直し

パウエル議長は、中長期的な政策戦略について当局者らは適切かつ個別の調整を行うとし、今夏の終わりには最新の見直しが完了するとの考えを示した。

また2020年に採用した政策の枠組みによりインフレへの政策対応が制限されたかとの質問には、「ノー」と答えた。

原題:Powell Says Inflation Data Show Fed Has More Work (Correct)(抜粋)

(銀行監督などについての発言や相場の動きを加え、更新します)

--取材協力:Maria Paula Mijares Torres、Laura Curtis.

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