個別銘柄の取引は日本株が大半だが、短期売買志向
その一方で、NISA口座からの上場株式の買付については、証券会社10社だと約9割が日本株式となっており、大部分が日本株式の個別銘柄であった。
しかし、NISA口座から買付けられた個別銘柄は、一部が早くも売却されているようだ。これが2つ目の理由としてあげられる。
元々、一般NISAでは上場株式の売却が毎年それなりに出ており、2014年から2023年の累積で上場株式を13.1兆円買付けられたが、残高は5.5兆円にとどまった。
新NISAになっても、その傾向が続いていることが考えられる。

実際に証券会社9社の2024年7月から8月上旬までのNISA口座からの買付額と売却額を見ると、上場株式は投資信託と比べて買付が少ないわりに売却が多くなっていた。
特に7月上旬は、売却額が同時期の買付額の3/4に達した。日経平均株価が史上最高値を更新するなど日本株式が最高値圏で推移する中、利益確定の売却が膨らんだことが見て取れる。

投資初心者は日本株でも投信経由
さらに3つ目の理由として、上場株式に限った話ではないが一部で課税口座や一般NISA口座からNISA口座への買い替えがあったことである。
個人の日本株式の売買は、2024年に入ってから急増している。
2023年秋にネット証券大手2社が日本株式の個別銘柄の売買手数料を無料化して、個人の株式売買がよりしやすくなっていた。そこに2024年は日本株式が好調となったため、活況となったと考えられる。
取引の急増自体は投資環境によるところが大きかったが、課税口座や一般NISA口座から新NISAへの買い替えがあったことも背景にあっただろう。
つまり、新NISAをきっかけに日本株式に入ってきた個人の新規資金、特にとどまり続ける新規資金は、想像以上に少なかったと推察される。
そもそも新NISAによって個人投資家が増えているといっても、実際に増えているのは投資経験の浅い人である。そのような人が、いきなり個別銘柄に手を出すとは考えにくい。日本株式を買い付けるとしても、投資信託経由であろう。
それもあって日本株式の個別銘柄の売買については、新NISAの影響が投資信託以上に限定的になっているのかもしれない。
このように新NISAが始まっても個人の資金が日本株式に向かわなかった背景には、投資先として日本株式を魅力的に感じていない人が多いことがある。
日本株式自体の投資魅力が高まってこないと、2025年以降も個人の外国株式選好や日本株式の短期売買志向が続く可能性が高そうである。
(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 金融研究部 主任研究員 前山 裕亮)