(ブルームバーグ):4年前に過剰な景気刺激策が数十年ぶりのインフレ加速を招く恐れがあると米財政・金融政策当局者を痛烈に批判したサマーズ元米財務長官がここにきて、物価上昇圧力が再び急激に高まる危険性があると警告した。
サマーズ氏はブルームバーグテレビジョンの番組で、「2021年の政策ミスで深刻なインフレが引き起こされて以来、最もインフレ加速反応が起こりやすい局面である公算が大きい」との見方を示した。
同氏は先週発表された1月の雇用統計における賃金の大幅上昇など、労働市場のタイト化の兆候を指摘し、新政権による措置が講じられる前から、消費者物価が上昇する可能性がある背景がすでに整っていると述べた。この統計発表後、トランプ大統領は中国からの輸入品に対する関税を引き上げ、その他にも多数の関税を強化する構えを見せている。
ハーバード大学教授でもあるサマーズ氏は「ホワイトハウスから打ち出される政策が実行される前であっても、インフレに対して非常に注意を払わなければならない局面だ」とコメント。米連邦準備制度理事会(FRB)に対して物価上昇圧力に対する警戒を維持するよう呼びかけ、現在のサイクルでさらなる利下げの余地はないとの見方を示した。
「起こりそうだというわけではないが、現時点では、米金融当局の次の動きは利下げではなく利上げになる現実的な可能性がある」とサマーズ氏は述べ、「コストショックやインフレに対する信頼を損なうようなレトリック、財政的に無責任な措置などが出てきかねない特に危険な瞬間だ」と指摘した。
21年の早い時期にサマーズ氏は、バイデン大統領(当時)の1兆9000億ドル(現在のレートで約290兆円)の大型経済対策がインフレをあおりかねないと警告。米金融当局が価格リスクに十分な注意を払っていないと批判した。22年3月にパウエルFRB議長は「振り返ると、(利上げを)もっと早く行うべきだった」と認めていた。
原題:Summers Sees Biggest Inflation-Breakout Risk Since 2021 Errors(抜粋)
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