(ブルームバーグ):10日の日本市場は円相場が下落。トランプ米大統領が全ての鉄鋼とアルミニウム輸入への25%関税を発表すると述べたことを受け、ドル買い・円売りが進んだ。債券は日本銀行の追加利上げ観測から売られ、長期金利は2011年4月以来、約14年ぶりの高水準を更新した。株式は横ばい圏。
SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は、関税発表を受けて最初はリスク回避により円が買われたが、関税を満遍なく課すということで、インフレ懸念から米金利が上がるのではないかとみられ、ドル高で反応していると述べた。
債券市場では金利先高観が強まっている。アクサ・インベストメント・マネージャーズの木村龍太郎債券ストラテジストは、本当に政策金利の1%までの利上げを見込むのであれば、長期金利は1.5%まで上昇してもおかしくないと述べた。
株式は関税による世界的なインフレ懸念が重しになる一方、日米首脳会談で日本に対する特別な要求がなかったことで安心感から買いも入った。トランプ大統領は日本時間10日早朝、日本製鉄はUSスチールの過半数株を取得できないと発言。日鉄株は最大で2.6%下げる場面も見られた。
外国為替
円相場は対ドルで一時1ドル=152円台前半に下落。トランプ大統領が鉄鋼とアルミニウムへの関税を表明し、米インフレ懸念からドルが買い戻された。
三菱UFJ信託銀行資金為替部マーケット営業課の酒井基成課長は、ドル・円には実需のドル買いも入った可能性があるとし、「前週後半からのドルの下げがあまりにも大きかったため、いったん戻りを試す展開」と述べた。
ドル・円相場はテクニカル面で長期的なトレンドを示す200日移動平均線(152円77銭付近)が目先の戻りのめどとして意識されている。酒井氏は「今週は米国のインフレ指標、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言の内容を確認しながら戻りを試す展開」とみている。

債券
債券相場は下落。日米首脳会談で警戒された円安是正への言及がなく、安心感から先物買いが先行したが、勢いは続かなかった。日銀の追加利上げ継続で政策金利の到達点が高まるとの見方から次第に売りが優勢になった。
りそなアセットマネジメントの藤原貴志債券運用部長兼チーフファンドマネジャーは「日銀の利上げ到達点がこれまで想定していた1%ではなく、1.25%の可能性があると市場が思い始めているのかもしれない」と言う。日銀が3月末に公表する4-6月の国債買い入れ予定で、残存期間10年超25年以下の買い入れを減額する可能性もあり、超長期債も弱いと指摘した。
アクサ・インベストメントの木村氏は、債券を買い向かう動きはなく、長期金利は淡々と上昇しているように見えると指摘。1.5%に上昇すると「さすがに達成感が出てくる可能性があるが、サポート材料がない」と語る。
新発国債利回り(午後3時時点)

株式
東京株式相場はTOPIXが下落し、日経平均株価はほぼ横ばい。米国でインフレ警戒が再燃し、利下げ期待が後退したことやトランプ大統領の関税政策への警戒感があった一方、日米首脳会談で日本に対する特別な要求がなかったことで安心感も出た。
インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストは「鉄、アルミへの関税が出たので、 不透明感が強まり市場にマイナスに効いている」と述べた半面、「日米関係に対する楽観論が浮上したことで、関税による悪影響は限定的なものにとどまった」と指摘した。
四半期利益が予想を上回ったディー・エヌ・エーは23%上昇した。川崎重工業も通期の純利益予想を上方修正したことを受け、一時7.5%上昇した。トランプ大統領が全ての鉄鋼とアルミニウム輸入への25%関税を10日に発表すると発言したことを受け、日本製鉄は軟調。

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--取材協力:山中英典、アリス・フレンチ.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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