(ブルームバーグ):中国の消費者は春節(旧正月)連休中の旅行や映画鑑賞で支出の記録を塗り替えたが、これが経済の好転につながるかどうかは不透明だ。
映画興行収入は13億ドル(約1990億円)という過去最高額を記録し、列車と旅客機の利用回数は2月3日に1日当たりの記録を更新した。3日までに発表された最新の公式データによると、連休が始まって以来、鉄道による移動回数は昨年の春節期と比較して約7%増加した。
今年の春節期は8日間(1月28日-2月4日)の連休だった。文化観光省が発表したデータによれば、春節連休中の観光収入は昨年と比べ7%増の6770億元(約14兆2100億円)となり、旅行回数は6%増えた。
ブルームバーグがこのデータを計算したところ、連休中の旅行1回当たりの支出は1日平均ほぼ170元。昨年から増加したが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前である2019年の水準には届かなかった。
春節を祝うムードは幅広い景気回復にはつながっていない。財新とS&Pグローバルが5日発表した1月の中国サービス業購買担当者指数(PMI)は予想外に低下し、活動拡大を示す領域内ながら4カ月ぶりの低水準に落ち込んだ。
HSBCホールディングスのエリン・シン氏らエコノミストはリポートで、「さらなる景気刺激策なしに連休中のムードがより持続可能な消費拡大の勢いにつながるかについて、依然として慎重な見方をしている」と明らかにした。
「今後数カ月間、活動を持続的に増加させるには、特に外部情勢が依然として非常に不透明であるため、カウンターシクリカル(逆周期)型の財政政策によるさらなる後押しが必要になる可能性が高い」と分析した。
変化の兆し
米国との貿易戦争で最初の戦火を交えた中国にとって消費の強さは重要だ。トランプ米政権が今週発動した対中関税引き上げの影響を打ち消すためには、国内需要改善が急務になる。
中国政府は昨年9月後半に一連の景気刺激策を発表し、消費拡大を今年の経済政策の最優先事項に位置付けた。
パンデミック以後、消費は中国経済の弱点となってきた。長びく不動産不況により、家計の資産と収入が減少。労働市場の悪化は消費者信頼感を低下させた。
ただ、倹約志向が変わり始めている兆しが、ここへ来てようやく表れつつある。広東省では1人当たりの観光支出が2%増え、浙江省では0.8%伸びた。
家電下取りの補助金プログラムが携帯電話やその他の電子機器にも拡大されたことを受け、多くの地域でスマートフォン販売が急増したと報告されている。
国営中央テレビ(CCTV)は商務省のデータを引用し、1月20日-2月1日に1500万人近い買い物客が補助金申請を行い、1890万台の携帯電話や電子機器を購入したと伝えた。
また、中国国家移民管理局が発表したデータによると、中国本土の住民は休暇中に本土外へ770万回旅行しており、これは昨年と比べ5%の増加になる。19年の春節休暇に記録した720万回も上回った。
「中国は巳年(みどし)を堅調にスタートさせた」と、シティグループの余向栄氏らエコノミストはリポートに記している。
原題:Chinese Splurge During Holidays But Angst Over Spending Persists(抜粋)
--取材協力:ジェームズ・メーガ、Chunying Zhang、Daniela Wei、Linda Lew.
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