トランプ米大統領の移民政策は、米企業の成長と収益に壊滅的な影響を及ぼす可能性が高いが、投資家はまだ動揺していない。同氏の計画が全面的に実行されるとは考えていないことが主な理由だ。

大量の強制送還はサービス業のホスピタリティーやレジャー業界のほか、労働集約型の農業や食品製造業、製造業、建設業などさまざまな業界を根底から覆す可能性が高いと、ストラテジストやアナリストは指摘している。

トランプ政権は南部国境での国家非常事態を宣言し、中南米への不法移民送還を開始したが、大量の強制送還や職場への大規模な家宅捜索は今のところ手控えられている。

ウォール街には安堵(あんど)の兆しが見られ、レストランを運営するヤム・ブランズはトランプ氏就任後1週間に2.4%上昇し、1月の下げを縮小した。建材メーカーのオーエンズ・コーニングは3%高。ホテルやリゾート運営会社は小幅な下落にとどまった。関税に関する行動が想定よりも控えめだったことを受けて、S&P500種株価指数が上昇したのと似通う。

こうした賭けは、トランプ氏が株式市場の動向を自分の成績表として利用するとの見方や、同氏が経済成長を阻害し株価を圧迫するような政策は回避するとの期待に依存している。つまり、この政策は有権者から広く支持されているものの、トランプ氏が実際に最大限に実行するとはトレーダーや投資家は考えていない。

パルナサス・インベストメンツの最高投資責任者、トッド・アシュルステン氏は「実行するより、口先だけのことが多いということを、人々はすぐに忘れてしまう。特に、20カ月後には中間選挙もある」と指摘。「従って、短期的な悪材料となり得ることを過大に予測して、間違った方向に進まないようにしたい」と述べた。

トランプ氏には広範な政策で過剰な約束をする傾向があることもさることながら、強制送還への控えめなアプローチに賭けている投資家は、同氏が連邦支出の削減を目指す中、多くの措置が法廷で試され、資金難に直面する可能性が高いと指摘している。

原題:Wall Street’s Big Hope Is Trump Pulls His Punches on Immigration(抜粋)

--取材協力:Natalia Kniazhevich.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.