トランプ大統領(20日)
「国家安全保障のためにグリーンランドが必要だ」
「グリーンランドの人々はデンマークには不満だが、われわれには満足するだろう」
20日の大統領就任後、記者団に対し、デンマークの自治領、グリーンランドの所有の必要性を主張したトランプ氏。
大統領1期目にも同じような主張をしていたわけですが、トランプ氏が固執するのは、なぜなのでしょうか?
グリーンランドや北極圏の安全保障の専門家、デンマーク王立防衛大学 マーク・ジェイコブソン准教授の分析で、様々な思惑が見えてきました。

理由1:安全保障の強化
グリーンランドは、日本のおよそ6倍の面積を誇る、世界最大の島。アメリカ大陸とヨーロッパの間に位置しています。
人口はおよそ5万6000人で、その9割は先住民のイヌイットです。
デンマークの統治下にありましたが、1979年に自治権を獲得し、現在はデンマークの自治領となっています。

グリーンランドはアメリカとロシアを結ぶ線上に位置しているため、もしロシアがアメリカに核ミサイルを発射した場合、グリーンランド上空を通過することになります。
グリーンランド北西部には、アメリカ軍の「ピツフィク宇宙軍基地」があり、レーダーでミサイル攻撃への警戒を行っています。
また、近年は、北極海の重要な航路としての活用も進んでいて、アメリカ、ロシア、中国にとって安全保障・経済面での要衝となりつつあります。
ジェイコブソン氏は、トランプ氏が「軍事力の行使の可能性も排除しない」と発言したことについては、裏を返せば、「デンマーク軍によるグリーンランドの防衛に満足していない」と主張していることになると指摘します。
マーク・ジェイコブソン准教授
「デンマークに圧力をかけて、グリーンランドにおける軍事的プレゼンスを高める狙いがある。駆け引き戦略のようなもので、より高いもの・非現実的なものを要求し、実際はそれよりも少ないもので満足をしようとしている」
トランプ氏が、相手の譲歩を引き出して実利を得るための“交渉術の一環”なのでは、というのです。
理由2:地下資源の獲得
グリーンランドが、投資先として注目されているのが、鉱物資源の開発です。

中でも、EV=電気自動車のモーターやスマートフォンなどの精密機器に不可欠なレアアースについては、世界有数の埋蔵量があるとみられていて、中国も高い関心を示しています。
去年12月、中国が一部のレアアースについて、アメリカへの輸出を禁止する措置を発表。ジェイコブソン氏はこうした動きも影響しているのでは、と指摘します。
マーク・ジェイコブソン准教授
「グリーンランドには豊富な種類の鉱物資源があります。南部に膨大な埋蔵量があるものの、まだ採掘されていません。中国がアメリカへのレアアースの輸出禁止をしたことを踏まえると、アメリカがグリーンランドを資源と経済の両面で、より興味深い場所とみるようになったと考えられます」
トランプ氏の発言に対応を迫られているのが、グリーンランドと、デンマークです。